僕達の中学は年功序列を重んじる学校だった。先輩の言うことは絶対だし、先輩が気に入らないと思った後輩はいつもやられていた。そんな学校だった。
そして入学式初日、1年生は先輩からの洗礼をいきなり浴びた。体育館での入学式が終わって、僕は組分けされた1年2組の教室にむかった。そして一通り諸連絡を受け、午前中のホームルームを終えようとしていた。
しかし悲劇は突然起こった。僕達の中学校は各学年5クラスあり、1,2,3組はA棟、4,5組はB棟、そして1年生が一階、2年生が二階、3年生が三階という構図を成していた。ちなみにA棟、B棟は向かい合っており校舎間の距離は25メートル程だった。
だが今年は1つ例年と違う所があった。1年生が三階、2年生が二階、3年生が一階という、例年と階の逆転現象が起こったのだ。理由は、3年生が悪すぎて、三階にいると何が落ちてくるか分からないという事らしい。意味が良く分からなった。そしてホームルームが終わろうとしたその時、3年2組A棟一階のたくやさんが、1年2組A棟三階の教室に入ってき、僕たちの担任へ叫びだしたのだ。最初は、よく叫んでる内容が分からなかった。
ただ少しずつ分かってきた。整理すればこういう事だ。『何で3年生が一階で、1年生が三階なのか?』。今、当時のたくやさんの気持ちを鑑みると2年間先輩に屈し続けた俺たちがなぜ一階で、冷や飯を食った事もない1年生が三階なのか?という事だったのだろう。
これを聞いて、は?と思うだろうか。それは皆様が普通の中学生だったことを意味するのではないだろうか。後々分かる事だが、僕達の中学校は本当にひどい学校だった。今思うと、たくやさんの気持ちも7%くらいは理解できる。しかし入学式当日の半日しか過ごしていない僕達には、当時は到底何が起きているのが分からず、キョトン👀とたくやさんを見ていた。するとたくやさんは、「何見とんじゃおどれらぼけ」と僕達に怒号を発した。そして一通り叫んだ後、「おどれらは3年の偉さを分かってない。これが3年の生き様じゃよう見とけ。」と言って1年2組A棟三階の教室を超高速で横切り、窓から地面に飛び降りたのだ。
僕はその光景を今でも鮮明に覚えている。そして三階約7メートルの高さから地面(少し芝生)をめがけて飛んだたくやさんは、身体を少しずつ捻りながら地面に吸い寄せられていった。そして次の瞬間、ドフッと鈍い音が鳴り響いたのだ。
女の子達はキャー😭と悲鳴をあげた。しかし僕は見逃さなかった。たくやさんが身体を捻りながら落下し、着地時に受け身をとった姿を。
そう、まるで刃牙の五点着地(五点接地転回法)を彷彿とさせる着地だったのだ。
そして落下後コンマ数秒を経て、たくやさんは3年2組A棟一階の教室にトコトコと帰っていったのだ。
担任の先生は僕たちにこう告げた。たくやは、柔道部やからね。みんなは真似しないようにね、と。
「できるか!!!」
後々分かった事だが僕達の中学校が3年生を三階にしたくなかったのは、たくやさんが窓から飛ぶのを後輩達が真似すると思ったからだそうだ。
「できるか!!!」
たくやさんは今、地元でパルクールを子供たちに教えているそうだ。
