今日は、僕の親友に起きた話。
僕達の中学時代は、モバゲータウン(以後:モバゲー)というSNSが流行っていた。モバゲーでは友達同士でお互いの日記(今で言うSNSの投稿)を閲覧したり、それぞれのユーザーが持つ掲示板にコメントをしたり、ゲームをしたりとガラケーながらかなり多様なサービスが提供されていた。
そして1年2組のクラスメイトに同じ野球部所属の親友、あつしという男がいた。あつしはヤンキー気質を備えた男だった。近所の公園内にある池で釣ったブルーギルを、嫌いな先輩の家の前に置いて帰るという行動があつしのルーチンだった。ただ道路で息絶えていたカラスを可哀そうだから助けようとし、仲間のカラスにボコボコにされたエピソードなど、優しい一面も備えていた。そんな彼と、僕はとても仲が良かった。
そしてあつしをより好きになるきっかけの、通称『モバゲー事件』が夏休み明けの9月起こった。僕は当時モバゲーを使いこなせていた訳ではなかったが、あつしは違った。僕や周りのクラスメイトは日記やゲームをすることに大半の時間を使っていたが、あつしは掲示板を多用していた。使い方はとしては、気になった知らない他校の女の子の掲示板にコメントをし、デートまでこぎつけるというものだ。夏休みの戦績は2勝73敗だそうだ。『※対面する所まで持ちこめれば1勝とする。(2回以上会った回数は0回)』
あつしの当初の目標は、夏休み中に3人と対面することだった。しかしヒットレシオ(的中率)の低さに嫌気が差したあつしは、その鬱憤(うっぷん)を晴らすため、嫌いな先輩の家の前にブルーギルを置くかの如く、気に入らないユーザーの掲示板を男女問わず荒らしまわった。何が気に入らないかの判断軸は良く分からないが、荒らし方は相手の掲示板に想像で相手の悪口を書き連ねるというものだ。想像で悪口を書いていく為、だいたいの人はあつしのコメントを無視する。しかし“ととたま”という名のユーザーだけは、あつしの悪口に反論してきたのだ。
あつしが書いた悪口は、「はげ、デブ、ちび」といった低レベルのものばかりだった。しかし“ととたま”というユーザーはあつしに反論し、「われ、どこのもんや?」と連絡してきたのだ。あつしはそれに対し、懲りずに煽るような表現をし続けた。しかし相手を甘く見すぎていた。恐らくあつしの友達リストやプロフィールなどから中学校を特定した“ととたま”は、僕達の中学校まで押しかけてきたのだ。
“ととたま”が学校に来たのは、午後の授業が終わった掃除の時間だった。そして学校に来た“ととたま”はあつしを出すよう校門近くに居た教員に掛け合ったのだ。普通なら会わせずに帰すのが学校としてとるべき振る舞いであろう。しかしそんな学校でないことは、僕のブログを見たことがある方は容易に想像がつくだろう。“ととたま”が怒っている理由を聞いた学校は、「話し合いの場を設けます。」と答えたのだ。当時は意味が分からなかった。しかし今思うと、ここで収拾を付けないと後であつしの身に何が起こるか分からない、と判断したのかもしれない。
そして、掃除中のあつしが応接室に呼ばれた。僕はあつしと掃除場所が一緒だったので、なぜあつしが呼ばれたのかが気になり付いていった。すると恐れおののく表情をした教員が何名もそこにはいたのだ。僕は場違いな所に居合わせてしまったと思ったが、なぜか面白そうだと思ってしまい面談に居合わせる事にしたのだ。“ととたま”の風貌を例えるなら、HUNTER×HUNTERに登場する、十老頭直系組マフィアの組頭、ゼンジだ。
(HUNTER×HUNTER11巻参照)
そう“ととたま”は、はげでデブでちびだったのだ。年齢は45歳とくらいだろうか。そして“ととたま”は風貌通りかたぎでは無かった。しかしあつしも根性が座っていた。“ととたま”があつしに対し高圧的に接してくるのに対し、全く動じず対等に話ているのだ。ただ応接室に居合わせた僕と、もしもの時に備えた体育教師2人は、いつ襲い掛かってきてもおかしくない状況に終始肝を冷やしていた。そして“ととたま”が、「わしは○○〇の○○じゃ。おどれはどこの組のもんや言うんじゃ!」と言ってきたのだ。要するに、『俺と対等に話しているが、そもそもなぜ中1のお前がそんな態度をとれるのか?お前はどっかの組の人間なのか?』という質問をしてきたのだ。しかし、あつしはその問いの意味が分かっていなかったのだろう。3拍ほどの間を空け、こう答えたのだ。
「1年2組じゃ!!!」
4拍間が開いた。そして“ととたま”は、「話にならへん。帰るわ。」と帰って行ったのだ。僕には“ととたま”が少し笑いを堪えているように見えた。僕は事態を招いた張本人ではあるものの、最後まで動じなかったあつしに心から敬意を感じた。そしてあつしは応接室を出て僕にこう言った。
「これで、3勝89敗✌」と。
