朝5時、TBSからの深夜宅送で帰宅。

先日、この深夜帰宅タクシーでの相乗りの相手が

あの有名な編成の企画担当部長Aさんでびっくりした。

2人きりになるのも、きちんと話すのも初めてで

大緊張の30分だった(笑)。


今朝の相乗りの相手はDOORSの大道具会社KのHさんだった。

そう言えばHさんとはあまり話した事がない。

この時期(番組改編期)は毎日、朝帰宅になるんだという。

小生はとりあえず収録の礼を言い、

そして無理難題の連続発注だった事を詫びた。

小生がDOORSのスタッフに無理難題をお願いする時、

誰ひとり「できない」と言わない。


その昔、小生が若かりしディレクターだった頃、

美術さんや、技術さんに急なお願いをすると

「できない!無理だ!」と叱られた。

だから今、そんな頃と比べモノにならない程大きな収録で

誰一人「できない」とも「無理だ」とも言わないのを不思議に思っている。

そんな話をHさんにした…すると…

「確かに…安請け合いしないみたいな、変なプライドがあって…

 ぼく達の先輩は現場で急な発注を受けた時、

 『できないって言え』と言ってました。

 だから僕も若い頃『できない』と言った事が何度もあります。」


「やっぱり…そんな時代でしたね(笑)」


「ええ…だけど…無理したら…出来たんですよ。

 『できない』って言った後、放送見て、出来たのになぁと思うんです。

 そして後悔するんですよ。」


「そうなんですか…」


「『できない』って言って、現場の空気を悪くして…

 その上、後悔して…なんだかなぁって思って…

 だから僕らの世代は『できない』って言わないようにしてるんです。」


「なるほど…」


「それに…

 DOORSには他の業者さんですけど

 僕なんかより全然ベテランの方々がいるじゃないですか。

 その方々がINUIさんの頼みを絶対に『できない』と言わないのに

 僕レベルが『出来ない』なんて言ったら恥ずかしいですよ。」


「ありがたい事だなぁ…」


「2005年の初回DOORSが大きいと思います。

 あれはTBSに出入りする全ての美術業者が集まって作ったじゃないですか。

 それで夢みたいなセットが出来て…

 俺たちがテレビ史上最大・最高のセットを作ったんだって…

 みんな嬉しかったんですよ。

 あれがあったから…

 DOORSだけは他の番組とは違うんだって…

 いつかまた、あれを作りたいっていう夢があって…だから

 誰も『出来ない』って言わないんだと思いますけど…」


Hさんは朝5時なのに饒舌だった。


確かに…

2005年のDOORSを見た他局の制作局長は小生に

「INUIちゃん!凄いな!これはテレビの夢だよ!おめでとう!」

と言った。


あれから5年…

DOORSに関わる1000人を超える人々は

まだ夢の途中なのか…


無理だと思う事を可能にする努力を重ねるには

「夢」というガソリンが要る。

一度「夢」が現実になったのを見てしまった人々は

どんな厳しい条件下でも「やります!」とだけ答えて

寒さの中、泥にまみれて歯を喰いしばって仕事を続けられるのか…

もう2005年の…あのDOORSなんて作れないだろう…

そんな事、1000人の誰もが薄々気が付いているのに。

それでも皆、夢を追い続けるか…。


タクシーを降りて

小生は朝マックを買い…

メガマフィンを食べながら

もっと…頑張ろうと思った。