DOORS2009春の収録を終え、

昨日はほとんど寝て過ごした(笑)

毎年の事だが、中年の身にはこのリハ・収録は堪える。

今回は演出のW、弊社のHが頑張ってくれたお陰で小生の負担は軽減された。

彼らが居なかったら新しい形態をとったDOORSの収録は

混乱の窮みと化していただろう。


少し、収録について触れたい。

2日目、全てのの収録を終え、ナイナイ岡村さんを見送った後

Uプロデューサーが言った

「やっぱりINUIさんは天才だ。」

いつもの持ち上げトークだ(笑)

これは小生、完全否定。

更に…

「あなたが居なかったらこの大勢のスタッフがこんなに働くわけがない。」


今回、東京湾で行われた海上自転車アトラクション「ウォーターバイク」の

美術を担当したMさんにはプレッシャーをかけた。

小生の思い通りになっていなければ絶対に許さない…と

要求はかなり難しい事だったのだが

鬼からの絶対命令である。

そして収録当日…Mさんの頑張りが「奇跡」を呼び寄せた。

これ以上無いドラマが生まれた。

収録後、小生はMさんと握手をしに行った…

Mさんは泣いていた。Mさんは小生よりも年長である。

小生が要求した日から、連日深夜に及ぶ試行錯誤。

そして、前日は心配で眠れずに過ごした事だろう…。

Mさんは結果を出したのだ。


富士オートメーションという美術関連会社がある。

今回収録したアトラクションの殆どのメカを作っている会社。

発注量が多すぎて、自社の中には装置が置ききれず

埼玉など、あちこちに倉庫を借りてメカを作っていた。

懸案となっていたアトラクション「マンション オブ テラー」は

リハーサルでも問題噴出。

このアトラクションだけで1000万円を軽く超えるセットなのだが

実は小生、本番ギリギリまで問題が解決しなければ収録中止を言い渡していた。

これは富士オートメーションのメカの不具合によるものではなく

別の理由によるものだが、テストを繰り返す間ずっと付き合わなくてはならない。

この会社にSさんという美術業者の最年長スタッフがいる。

SさんはDOORS以外の番組で現場に出る事はない重鎮。

そのSさんは大雨の降る極寒の深夜、若い後輩達と一緒に

高さ15mの鉄骨に幾度となく登り、連日のテスト全てに付き合い

果たしていつ寝ていたのか…

なんとか本番を終え、小生と握手した時こう言った。

「もっとテストしなくちゃね。」

小生は収録を諦めかけていたから、撮れただけでも十分だったのに

次の事を始めようとしている。

偉大な先輩である。

Sさんは…

「INUI君が現場に来なくなったら、僕も休めるのにな。

 この歳で現場はキツイけど、INUI君が居るから仕方無い」

いつもこう言って笑う。小生はこう返す

「Sさんが来なくなったらきっと事故が起きますよ。だったら…

 僕は現場から離れませんよ。」


新アトラクションのひとつ「ハニカムキャノン」

これについても不具合が出ていた。

前出の富士オートメの若手にK君というスタッフがいる。

K君、見た目は非常に頼りない(笑)

筋肉番付をやっていた当時は富士オートメのアルバイトだった。

ここ数年、小生は彼の見事な働きで何度も助けてもらっている。

このアトラクションの直しも連日深夜まで及び

大きなメカの下にもぐって微調整をする。メカの下は濡れた地面である。

広場に設置されたテントへ戻ってストーブで暖をとる頃には

寒さでガタガタ体が震える。

K君は感覚が無くなった手足をストーブで温めながら

小生に一言たりとも文句を言わず

「すみません、もう少しで直ります」とだけ言う。

このアトラクションの別の不具合を直しに

金井大道具という会社から「伝説の大工さん」が来た。

小生は間に合い的に厳しいか…?と思っていたので

「伝説の大工さん」の見事な仕事に驚いた。

美術プロデューサーのAさんもまさか「伝説の大工さん」が

若手に任せず自らが登場して直すなんて信じられないと語った。


大道具会社の大手シミズオクトに I さんという親玉がいる。

大勢の鳶職、大道具スタッフを抱えるまさに「親玉」だ。

今回の屋外広場に設置された数々のアトラクションでもここのスタッフが

大雨と寒さの中、獅子奮迅の活躍。

大道具さんという人達は想像通り、見た目は怖い人達である。

ニッカボッカにヘルメットという出で立ち、ピアスに金髪、タトゥーだらけ

絶対に街で出会いたくない(笑)

収録現場だから平気だが、街中で「INUIさん!」と声をかけらても

絶対に振り向きたくない(笑)

この金髪野郎達とはもう10年以上の付き合いである。

筋肉番付時代から今回のような現場で一緒に泥だらけになってやってきた。

クレーン車に大きな声で指示を出し、フォークリフトで縦横無尽に現場を駆け回り

常に小生の考えを先回りして安全を確保してくれる。

どんな雨でも寒さでも鉄骨へスルスルと登り、

「INUIちゃん、あそこやっておいたから、大丈夫よ」と

笑いながら言う I さんと金髪野郎達。


最後、全てのアトラクションを事故無く終え

耐油手袋を外し小生と握手した I さんと金髪野郎達の手は

氷のように冷たかった。

しかし…土まみれの顔はどれも満足げに笑っていた。

そして深夜3時、トランシーバーで金髪野郎達全員に I さんが伝える

「ヨシっ!撤収だ!さっさとやれよ この野郎!」


特殊効果のスパークという会社がある。

以前ブログに書いたDOORS2006富士山編で発注以上の見事な花火を

小生の為にサービスしてくれた人達である。

今回も「ハイジのブランコ」等で見事な仕事をしてくれた。

ナイナイの矢部さんをして

「一番凄かったんは、ブランコの画ですね!」と言わしめた画は

この会社の「炎」である。


こうして…テレビの制作現場の裏話や苦労話を

視聴者である皆さんへ向けてブログで書く事は

決して良い事ではありません。

どんなに大変だろうと良い話であろうと

視聴者の皆様には「出来上がった番組が面白いかどうか」が全てであり、

途中経過がどうだったかなんて関係ありません。

では、

小生が何故こうして書いているのか…

それは…

きっといつか、それも近いうちに

DOORSを始めとする大掛かりな番組は、この時代の流れに逆らえず

姿を消して行く運命でしょう。

テレビから予算がかかる番組は無くなり

テレビに夢を見出す若者も子供も居なくなっていくでしょう。

残念ですが…。

小生のつまらないこのブログを読んだ皆さんの誰かが

大掛かりであるが故の達成感やスタッフの連帯感を

現場の状況を含めて知って頂きながら

「まだまだテレビも捨てたものじゃないな」と

感じて頂けたら幸いです。

そして、「僕なら・私なら…僕も・私も…もっと凄いテレビ番組を創りたい!」

そんな未来の後輩達の夢に繋げられたなら書いている意味もあるでしょう。

小生は近い将来、体力的な面を含めて現場から退かなければならない時が

来るでしょう。

「テレビ屋の夢」のような番組のひとつである「DOORS」。

そこに関わる、そこに纏わる1200人の人々の生き様を

少しだけ描かせて頂き、

「テレビなんてくだらん…」と思っていらっしゃる方々に

少しだけ興味をもって頂ければ十分です。

次回、もう少しだけ収録について触れたいと思います。