注! 連続更新しました。前記事の続編となります。

8月 DOORS2006 収録。

テーマは壮大だったが実際はスケールダウン感が否めなかった。

またスタッフの労働環境も劣悪だった。

民宿の大きな宴会場が宿泊先だったのだがそれでも寝る場所が足りなく

民宿のロビーで倒れて寝ているスタッフも多くいた。

20年以上この仕事をやっているがこれほど辛い環境で

仕事をした事は後にも先にも無い。


総合演出Kさんと小生は全スタッフに申し訳無いと思いながらも

淡々と収録を進めざるを得なかった。

でないと…収録は終わらないから。



収録2日目の深夜、最終のゲーム、富士の夜空に大きな花火が打ち上がり

全収録終了。

Kさんと固い握手をした。



はて…おかしいな…

こんなに花火を打ち上げるように発注をした覚えがないな…

予算は無いはずなのに…



収録を終え、Uプロデューサーが「お疲れさま」と話しかけてきた。

「すごい花火でしたねぇ…」と小生。

「あれ?知らなかったんですか?」とUプロデューサー。

「は?」


「僕もスパークのNさんに花火凄かったですね。お金大丈夫ですか?

 …と言いに行ったんですよ。

 そしたらスパークのNさんは…お金じゃないんですよ。

 あの花火の数は発注にありませんから。


 あれは、INUIさんの為に上げました。

 INUIさんチームの仕事が好きなんですよ。

 だからお金なんか要りません…と言ってましたよ。」



泣きそうになった。


さっき「お疲れ様でした」と言いに行った時、

Nさんはそんな事はひと言も言わなかった。



花火は「スパーク」という特殊効果の業者さんの仕事である。

火薬や燃料、可燃物を扱う為に所謂「職人気質」の人達である。

現場では緊張感が漲り、若いスタッフを怒鳴り、殴りもする。



タレントさんにケガや事故の無いように細心の注意が必要だからだ。

他の美術業者の皆とは違い、実は小生とは前年からのお付き合いである。

前年のDOORSでNさんにはかなり無理なお願いを何度もして、

Nさんが提案してくれたモノに対してNGを出しまくり…


職人肌であるNさんは試行錯誤の末、最高のモノを作ってくれた。

最後のモノを見た時小生はNさんの仕事に拍手したのを覚えている。

Nさんは照れくさそうにしていた。



「DOORS2006」の視聴率は15%を超え、ノルマは達成。

全スタッフの苦労は報われた。

以前、書いた事だが…

総合演出Kさん、監督である小生…


現場にいるスタッフに細かい事を入れると数百ではきかない位の

注文、無理難題な指示をする。

しかしそれは合っているのか間違っているのかは分からないのだ。

「多分、こうした方がいい」という程度の確信だから。



でも、のべ1200人にのぼる全ての業者の皆さんは…

寝る場所も無く、

滅茶苦茶安い3食の弁当の食事、安い予算で儲けも無いのに…

にこにこ笑って迅速に対応する。



「視聴率」とは、我々が出した指示がどれ位正解だったのかを

計るバロメーターだと思う。

素晴らしいスタッフに感謝の言葉だけでは足りない。

「結果」こそが報いである。



DOORSは放送の最後、スタッフの名前が流れるエンドロールに

放送に関わった全スタッフの名前が映画のように流れる。

2分もかけて流れる。


業界では「エンドロール」が流れ出すと

視聴者がチャンネルを変えるという強迫観念から

なるべく短く、しかもバーッと読めない位早く流す事を

良しとしているプロデューサーがほとんどだ。

感謝を込めて全員の名前を出そうと決めたUプロデューサー。



小生が命を削っても構わないという思いは、Uプロデューサーの

この「配慮」に因る。

予算が無いから色々な事をケチるのは仕方無いが

「感謝」と「ねぎらい」の気持ちをケチる人には数字が追いて来ない。


エンドロールに対する思いは過去記事「たまたま此処に居る」で書いたとおりである。

大小問わず、番組に関わったスタッフには家族・親・恋人・友人がいる。

何故、彼氏は休みが無いのか、パパは遊んでくれないのか、

何故約束をすっぽかすのか…


せめて名前を出して「あの番組をやっているからだ…」という証でも

無いと報われないのではないか。

分刻みの視聴率で勝負している我々の仕事で

こんな感傷的な事を言っているようでは甘いが…


Uプロデューサーのやり方はDOORSの高視聴率を支える

大事なファクターだと小生は思うのである