大好きな小竹めぐみさんが、パートナーの小笠原舞さんと出した本が手元に届きました。

 

めぐちゃんに、最初に会ったのは京都でのこと。

夢みたいなシェアハウスに、するりとあらわれためぐちゃん。

細い眉と、ミュージカルみたいにくるくる美しく動き回る手。思えば、あのときからめぐちゃんは、魔法使いみたいでしたね。

 

また、素敵な時間をもらいました。何度でも読み返したいと思います。

めぐちゃん、舞さん、それから、ふたりのまわりの素敵なみなさん。ほんとうにどうもありがとう。

 

 

 

 

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┃いろんな人が語りかけてくる本

 

めぐちゃんが、本を出すんだと知ったとき、どんな仕掛け絵本ができるんだろうと思いました。

 

めぐちゃんの周りには、いつも元気な人たちがいて、イマドキっぽくて、サザエさんの登場人物みたいにみんないい人ばっかりで、ああ、そういう人たちがつくるなら、きっと、軽やかな、でもいっぱいのイマドキを詰め込んだ、「あたらしい本」が届くのだと思っていました。

 

でも蓋をあけて、びっくり。

それはまるで、森の奥深くにひっそりと住む、やさしいおばあさんがこっそり語りかけるような、懐かしいにおいする本でした。

 

この本が不思議なのは、語り掛ける人を、いつも忘れさせるところです。

めぐちゃんが、「2人で書いた気がしない」と言っていた通り、この本の中で話しかけるのは、めぐちゃんでも、舞さんでもないような気がするのです。ときどき、「私たち」と一人称が出てきて、ああ、これは二人の本だったと思い出すのだけれど、それもすぐ文脈の中に溶け込んでしまう。

今まで、彼女たちの活動に携わってきた人、たくさんの子どもたちや家族が、入れ替わり、たちかわり、話しかけてくるみたいな不思議な本です。

 

読みすすめていくうちに、これは、子育て本ではないな、ということが判明します。

そして、子どもたちについて語る本でもないことを。

 

 

 

┃本のたたずまいにみる「対話」

 

例えば、わたしは数秘術によって、ひとのいろんな資質を見せてもらうのが大好きなのですが、そういう話をしているとき、しらない親御さんがやってきて、「うちの子、大変なんです。みてください」といわれることがよくあります。もしくは、「わたしのことなんてどうでもいいから、孫のことを」っていうおばあちゃんとか。

 

でも、よくよく話を聞くと、彼女たちの問題は、お子さんや、お孫さんにはないんです。お母さんや、おばあちゃんが、「この子は問題」と思っていることそのものが、ことを荒立てている。ほんとうはそれすら問題ではないのだけれど。

 

自分が見たくないもの、置き去りにしてきたこと、直接見るにはこわいと感じることを、無意識に子どもたちに投影する。そういうのってよくあることです。

そんなときに、この本は、そうやってしかあらわせない、どうにもならない気持ちさえも、まるごと包み込んでくれる。

 

「そんなの、問題は子どもじゃないでしょ。あなた自身を見つめなさいよ。」っていきなりいってきたりもしません。そこにとどまる気持ちも汲み取ってくれる。

 

世の中には、たくさんの本がありますが、いいわけを聞いてくれる本、ってなかなかないんです。この本は、ちゃんと読む人の弱さも、やるせなさも包み込んでくれる。そういう本って、とっても貴重です。

 

きっと、ここに、彼女たちが、日々鍛錬してきた「対話」の真髄があるのだろうなと思うのです。ちゃんと向き合うこと。話を「聞ききる」こと。それを、彼女たちは、この本のたたずまいで教えてくれます。

 

言葉によらないコミュニケーション。それを、ほとんど言葉だけでつづられる「本」というかたちの中で、やってのけるって、やっぱりさすがだなあと思うのです。

 

 

 

┃そのまんま大きくなってね

 

この本の中には、びっくりするような目新しいことは書いてありません。

もちろん、彼女たちなりの、独自の視点で、さっくり整えてあるけれど、これさえすれば、明日から万事解決!っていう特効薬はありません。

ただただ丁寧に、子どもたちって、こんなふうだよ。こんなこと考えているんじゃないかな、こうしてみたらいいかもよ。楽になったよ。というのが淡々と語られていきます。

 

その想いは、「そのまんま大きくなってね」という言葉に集約されています。

めぐちゃんが子どもたちに投げかけていきたいというこのひとこと。

「人間の自然な状態ってどんなだろう?」アマゾンで持ち帰った問いのこたえを彼女はこのひとことに詰め込みます。

 

 

 

┃子育て・保育のもっと外から語る人

 

子育てを語る人って、ときどき、「子どもだけが大事!アンチ大人!」みたいな人がいてびっくりします。そうか、子育てをするのって、自分を否定することなんだ。そういうメッセージを受け取って、なんだか気が重くなることも。

 

でもね、この本は、みんな、「大きくなった子ども」だっていうこと、みんな「いつかは子どもだったんだ」っていうことを、ないがしろにしません。

 

浮き彫りになるのは、「子ども」という自然。ほら、子どもって人間歴浅いから、まだ地球の、社会のルールになじんでいないじゃないですか。子どもって、自然にとっても近いと思うんです。

 

だとしたら、もしかして。

もしや、めぐちゃんたちは、保育士ではないのかもしれない、とさえ思います。

彼女たちが、もしも違う時代に、違う世界に生まれたら、どんな職業をしていたのだろうと想いを馳せてみるのです。

 

もし、時代も場所も違ったら、彼女たちは、政治家だったかもしれないし、武士や農家だったかもしれない。魔女だったり、魔法使いだったり、ちょっと不思議な薬屋さんにそっと潜んでいたりして。

 

もしかすると、もしかして、彼女たちは、「子育て・保育」ということのもっと外側で、子どもたちに関わりたかった人かもしれない、と。

 

 

 

┃大人の荷物を降ろしてもいいよ

 

例えば、人の悩みって、恋愛の生傷も、人間関係のしがらみも、結局子どもの時代に起きたことが大きな原因だったりします。

 

あのおじいさんは、どうして徘徊ばっかりするのか、わたしはどうして昔の彼が忘れられないのか、周りとうまくいかない上司たちのやけ酒の理由。

 

そんなすべてに、そっと問いを投げかけるように、めぐちゃんたちは、子どもたちとのかかわり方をきり拓いたのかもしれない。

そこが、すべてにつながる根源だと思ったから。

 

だから、この本は、なんにだってなれる。アメーバみたいな本です。

 

お母さんや、お父さんが読めば、「いい親よりも大切なこと」

おばあちゃんやおじいちゃんなら、「いい祖父母より大切なこと」

思春期の中高生だったら、「いい娘よりも大切なこと」

福祉関係の人が読むなら、「いい支援者よりも大切なこと」

部下に悩む会社員ならば、「いい上司よりも大切なこと」

「子ども」の部分を今気になって仕方ない人に置き換えたら、なんにだってなれます。

 

だって、みんな、実はにんげんなんだもの。実はみんな、昔は子どもだったんだよ、って。

 

みんな、「私は大人です、社会人です」って、一生懸命たくさんの武器や鎧を着て歩いているけれど、もう少し、その盾を薄くしてもいいのかもしれない。その刀で、おいしい料理を作ってみてもいいのかもしれない。たまには、すべての荷物を降ろして、自分の中の自然を目いっぱい感じてもいいかもしれない。

なんだかそういう本かなあって思うんです。

 

 

 

┃本のなまえに込められたひみつ

 

そうそう、それから、この本のすごいところをもう一つ。

 

『いい親よりも大切なこと』というこの本のなまえを数秘術で見てみると。

95という数字がぼうっと姿をあらわします。

 

9という数字は、アメーバを示す数字。なんにでもなり変わって、世界を潤す、湧き水や大自然みたいな数字。

5という数字は、生きる息吹。人生は、すべて遊びの中にあって、体験することこそが、生きることなんだよ。と響かせるような。

そんな2つの数字を、メッセンジャーを表す、11という数字がつないでいます。

 

なんにでもなれる、やわらかな思想を、メッセンジャーが運んで、生きる息吹を吹き返す。人生に本来のきらめきを取り戻すために生まれた、夢みたいななまえです。

 

 

そしてもっとすごいところは、

なかでも、その名なまえの中心を、5という数字に託しているところ。

 

5という数字はエンターティナー、光り輝く舞台で踊る人、つまり「舞」う人の意味も持っています。

 

そして、自らの凹み・人とのつながり生み出す数字としてたたずむ、8の存在が光ります。

日本でも末広がりとして縁起の良さを称えられる八の数字は、豊穣、実り、つまり「めぐみ」を表すのでした。

 

 

数字の中から、そっと立ち現れる「舞」と「めぐみ」。

 

 

彼女たちの思想は、舞さんを中心に据えながら、めぐみさんの突出した凸凹を通じて、世界をつないでゆくのかもしれません。

 

 

こんな、嘘みたいに、できすぎたストーリー。

きっと、数字をつかさどる、夜空の星たちが、彼女たちの取り組みを、両手を広げて歓迎しているのを表すのだと思います。

 

 

 

表紙をひらくと、そっとしずかな、豊かな時間の広がる一冊です。

今を生きる、すべてのひとたちに、手に取ってもらいたいと願います。

 

 

 

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いい親よりも大切なこと ~子どものために“しなくていいこと"こんなにあった!
小竹 めぐみ (著), 小笠原 舞 (著)