長い余韻を残して歌い終えると、突然の爆音がアリスを襲い驚いてお皿を落としてしまった。


拍手喝采。


アリスが振り返るとシロンもクロウリーも、お客さん皆がアリスに向かって拍手をしていた。
 






 
アリスは戦唄以外の歌を知らない国を初めて知った。


実際、さっきの歌も。

「心が掻き毟られそうな歌だったね。
あれはどんな戦いに行く前の戦唄だったんだ?」

と、朝から酒を飲んでいたおじさんに言われたくらいだ。


シロンもクロウリーも戦唄以外の“歌”を初めて聴いたみたいで、また聴きたいとアンコールをしていた。


アリスは話を聞いていて、この国の人たちをカワイソウと思った。


このカワイソウな国と人々に歌ってあげよう。




アリスは歌った。


知っている限りの歌を、うたを、

ウタヲ

歌い、

唄い、

謡い、

唱って、

詠って、

謳って、

うたって、

ウタって―――――……。




ウタッタ。

































「ははは♪」


アリスはこのカワイソウな国の為に
“ウタ”をうたった。
   


 
ここの宿屋は、路地裏という所にありながら、それでもお客さんがいないわけじゃなかった。


「お、新入りか?」


「こんにちは」


しかし、客と言っても酒を飲みに来て、酔いつぶれたのがお金を払って泊まっていくのが殆どだった。

お客さんさんの多くが、がらの悪いおじさんなのも頷ける。


「あらん、
今回の新入りさんは可愛いわねぇ」


「…ども」


あ、女の人もいます。少ないけど。


「アリスー!洗い物が追い付かない、
こっち来て手伝ってー!」


台所からシロンの声が飛んできた。
覗いて見ると、シロンがお皿の山に埋まっていた。

アリスは思わず笑ってしまった。

それを見てシロンが膨れっ面になった。


アリスはタダで泊めて貰う代わりに、アルバイトとして この宿屋で働く事になった。


宿屋での仕事はなかなかに楽しかった。


「…いーままで、
楽しかったと呟いて…♪」


お皿を洗っている最中、つい 癖の鼻歌を知らず知らずに口ずさんでいた。


悲しい愛の物語、愛し合っていたのに報われなかった恋の物語。


シロンやクロウリー、そして騒いでいた筈のお客さんまでもが手を止めて、アリスの歌声を聴いていた。
 
 
シロンの言うことには、『列車は後4日しないと来ない』らしい。


その言葉にアリスは更に落ち込んだ。


「やっと…やっと受かったのに……初日から2日も欠席って……。」


「ここはド田舎だからね。人も少ないし、列車の数がうんと少ないんだよ。」


あったかいシチューをのみながらシクシク泣くアリスにシロンがお皿を拭きながら慰めに来た。


「運が無かったと思って諦めろ。」


慰めているのか莫迦にしているのか分からない声が受け付けから降ってきた。
クロウリーだ。


「列車に降り間違えるとはとんでもない
運無し。」


訂正。完璧に莫迦にしていました。


アリスはため息を一つ付き、シチューを残さず食べると、シロンが用意してくれた部屋に上がった。


結構広いし、良い部屋だった。


色々な事があって疲れていたのか、ベットに倒れ込むとすぐに睡魔がアリスを襲い、あっという間に深い眠りの底についた。