ひとしきり泣いた後。
私は女の子に尋ねた。


どうしてこんな所にいるのか。
他にヒトはいるのか。
私の事を知らないか、と。


女の子は私の事を知らなかった。
まあ、期待はしていなかったけど。


女の子は他にもたくさんヒトがいると言った。

この先に小さな集落があるらしい。


どうしてこんな所にいるのか。
女の子は先ほどの黒いヤツに捕まって、運んで来られたと言う。

お母さんと一緒に……。



女の子がまた泣き出しそうになったので、ポンポンと軽く頭を叩いてやった。


「そういえば、名前は何て言うの?」


「ハク。」


小さく、照れながら言った女の子の髪は白で、お似合いな名前だなと思った。


腰まである髪を青いリボンで軽く結っている。

ただ、せっかくの綺麗な白髪が泥と埃と血とで汚れてしまっていた。


「おねーちゃんのお名前は何て言うの?」


赤い、ルビーのようなつぶらな瞳で私を見上げ、今度は私の名前を訊いた。


「……………判らないの。」


「自分のお名前が判らないの?」


女の子が驚いた様子で私を見ていた。


「うん。どうして此処にいるのかも思い出せないんだ。」


頑張って笑顔を作ったけど、多分、笑顔になってないな。


「……じゃあ、
あたしがお名前を付けていい?」


女の子がそんな事を言った。


「良いよ。
ただし、可愛い名前にしてよ。」


名無しは私も嫌だ。
付けてくれるなら嬉しい。


女の子は凄く悩んで悩んで、そして私に、


「おねーちゃんのお名前は“アリス”!」


“アリス”、と名前を付けてくれた。