緊急事態宣言は解除されたが、既にリバウンドを見せ、各地で感染者数が増えている。


このままでは、第四波が来るのは明らかであろう。


以前書いたが、政府が目指したいのは「感染者数ゼロ」なのか「病床逼迫の解消」なのか?


感染者数を減らしたいのであれば、より厳しい規制が必要となろう。


夜の会食はダメだけど、昼間のカラオケはOKなんていう意味不明な政策で感染者数が減るはずもない。


病床の逼迫を回避するための病床数の増加、病床の転換こそが次のパンデミックに備える唯一の方策であると私は考えている。


パンデミックはだいたい10年に1回発生すると言われる。


2009年の鳥インフルエンザは記憶に新しいが、その規模は感染者数や死者数から見て今回の新型コロナの約10分の1。


それでも、感染症病床の不足が指摘され、また日本でのECMO治療による救命率の低さも問題になった。


日本の感染症病床は1,888症(厚労省ホームページより)。


結核病床4,466症(同)を入れても6,000症余りで、いずれもここ40年余り減少の一途である。


鳥インフルエンザを経験して感染症病床数の不足が言われているのに政府は何もアクションを取らなかった。


感染症病床を増やしていれば、今回の新型コロナにも寄与しただろう。


集中治療室(ICU)の不足は今回も指摘されているが、日本のICUは5,600床余りで、人口あたりの病床数でアメリカの8分の1、ドイツの7分の1である(日本集中治療学会資料より)。


まずは欧米に比べて圧倒的に少ない高度医療を施せる施設数や病床数を増やす事が急務である事は明らかだし、医師も政府もそのように認識しながら、実際には何も進んでいない。


欧米諸国では、それだけのICUを抱えていたにも関わらず、コロナ患者により病床が逼迫したのはご存知の通りであり、日本の脆弱な体制を知っている政府が、意図的にPCR検査数を減らして感染者数を低く見せたのも無理はない。


新型コロナで一躍注目を浴びるようになったECMOも、2009年の鳥インフルエンザの時は惨憺たる状況だったと言って良いだろう。


イギリスの救命率が70%を越えている時に日本は35%程度。


逆に新型コロナでは日本の救命率は70%を越え、鳥インフルエンザの教訓が生きた形になったが、これは一部の志ある医師達の努力の賜物であって、別に政府が何かしたわけではない。


2009年頃は、多くの「不慣れな」病院にECMOが設置されており、標準治療法も定まっていなかったので、現場の医師達は苦労した。


患者は多くの病院に分散し、それぞれの病院の基準で治療を受けた。


イギリスなどでは、ECMOなどの高度医療機器を特定の施設に集中させたため、治療法も標準化され、大きな成果をあげたと報告された。


イギリスでの1病院あたりのECMO治療数は日本の10倍だったと記憶している。


その後、日本でも医師達がECMOネットを立ち上げ、治療法などの情報を共有し、メーカーの協力の下、機器を使用するトレーニングなども計画的に行われた。


その成果が新型コロナに発揮されたのだ。


ICUや感染症病床が足りない一方で、政府は日本の病床数は世界に比べて多過ぎると言って削減計画を実行中である。


日本の人口あたりの病床数が世界に比して多いのは事実だし、これが病院あたりの医師数の不足につながっている(病床数は多いのに、医師や看護師の数は欧米並みかそれ以下)。


医療従事者は慢性的に不足し、医療従事者は常に激務を強いられている。


政府は、これも30年以上前から病院数は減らして、より大規模で高度な医療を施せる施設に転換し、一般的な病気はホームドクター(かかりつけ医)に診てもらうようにしたいと言い続けているが、その成果は全く出ていない。


かかりつけ医制度に関してはまた書きたいと思うが、上記のいずれの政策も新型コロナ第四波には間に合わない。


鳥インフルエンザからは何も学ばなかった政府だが、新型コロナからは何か学んでくれただろうか?