遡ること10年前
2009年 王位戦
羽生挑戦者を退け連覇を果たした深浦康市王位
三連覇を掛け現れた挑戦者は木村一基八段
3局目終了後、深浦王位から見て星取りは
●●●
3連敗 絶望の淵
七番勝負でこの黒星3つ、次局も後手番で目の前は暗くなるばかり
しかし深浦王位は強かった。
後手番の矢倉の捩じり合いを制するとその後の2局も勝ち切った
●●●〇〇〇☆
決着は最終局へ
最終局は横歩取り
この時、当時始まったばかりの棋譜中継が王位戦では行われていた
絶望の淵から立ち上がった深浦王位、ファンの熱も最高潮だった
中継サイトが見れなくなった今でも、その時の棋譜コメントを覚えている
「この日が来るとは思わなかった」
皆もそう思っていたはず、そして印象的な言葉だった
深浦王位もファンの熱に応えるような大熱戦、
横歩取りから始まった激しい将棋は深浦玉が入玉出来るかどうかの超接戦
大駒が飛び交い、一息ついたと思いきや今度は木村玉がゴールを目指して動き始める
そんな大熱戦も、終わりを告げる
125手目を見て △木村一基八段 投了
深浦王位から見て星取りは
●●●〇〇〇〇 防衛
絶望の淵から帰ってきた深浦王位は、3連覇を果たしその王位の名を確かなものにした。
最終手 棋譜コメント
「雨がやみ、虫の声がする。三連敗からの逆転防衛、この日が来ると信じていたのだろうか。」
終局間近を感じる周囲の空気、そして劣勢からの逆転劇を現す一文
諦めなかった深浦王位の胆力は本当に素晴らしい。
その少し前にあった竜王戦と同じく将棋の歴史に残る一局、そう思った。
。。。ただ、深浦王位に敗れた、挑戦者の木村八段は辛かったはず
木村八段から見ての星取りは
〇〇〇●●●● 奪取失敗
深浦王位はこの日(タイトル防衛)を待ち望んでいただろう
木村八段はこの日(タイトル奪取失敗)が決して来てほしくは無かったはず
興奮冷めやらぬ中、光と影 という単語が一瞬思い浮かんだのを覚えている
木村八段のタイトル戦星取りは直近の王位戦を除き
2005 竜王戦 対渡辺明竜王 ●●●●
2008 王座戦 対羽生善治王座 ●●●
2009 棋聖戦 対羽生善治棋聖 ●〇〇●●
2009 王位戦 対深浦康市王位 〇〇〇●●●●
2014 王位戦 対羽生善治王位 ●〇待●●〇●
2016 王位戦 対羽生善治王位 〇●●〇〇●●
後1勝でタイトル、それを8度負けてしまった
1勝の重さが本当によく分かる
2016年の王位戦、再び後一歩が届かなかった最終局
敗れた木村九段の口からはインタビューで声が出なかった、出せなかった
見ていても、辛かった
3連勝4連敗の王位戦から10年が経ち
糸谷竜王、佐藤天彦名人、菅井王位、中村王座、菅井王位、高見叡王、永瀬叡王、豊島名人
渡辺明三冠と同世代や下の世代が次々とタイトルを獲得し
何より豊島名人の躍進と藤井聡太七段の登場、世代交代の風を感じていた
木村ファンも、この中でタイトルはもう苦しいか・・・
2016年の王位戦の後、そんな空気は確かにあったと思う
しかしそんな風に反するように 2018年度成績は25勝14敗の好調
40代半ばを超えた木村一基九段は戦い続けていた
2019年度は竜王挑戦者決定戦三番勝負と、王位戦七番勝負に出場
どちらも対するは時流に乗る豊島名人との十番勝負
最初の2局は●●2連敗、見るのが嫌になりそうな黒星
ただ木村九段は諦めなかった
竜王戦挑戦者決定戦 ●〇●
王位戦 ●●〇〇●〇☆
竜王戦も、王位戦も先に追い詰められた
だが木村九段は諦めずにどちらもフルセット・十番勝負に持ち込んだ
十番勝負のラスト・王位戦第七局
1日目は木村九段は時間差を付けられながらも落ち着いた差し回し
2日目
69手目 ▲8二銀と飛車取を掛けた局面、木村九段の応手は・・
70手目△5一飛
「なぜ、飛車をここへ・・?」
逃げるなら受けに効かせる4一や6一が普通
解説者が疑問を呈する中、その狙いは5手後に分かる
75手目▲7三銀成
後手が△同銀と取ると、▲同角と取った手が飛車にも当たり味がいい
木村九段はここで攻め合う・・かと思いきや
△5二飛車!
千駄ヶ谷の受け氏の異名を持つ木村九段の真骨頂
5一に逃げた飛車、この位置ならば受けに効かせられる!
豊島名人も攻めあぐね、徐々に盤面は木村九段有利に移り。。。
木村九段優勢の局面、追い詰められた豊島玉
そこへ
ずっと、ずっと 動かずも機を狙っていた桂馬の跳躍が決め手
棋譜を見ていて涙が出ていた
この時を待っていたのは、駒を動かす彼自身も同じだったはず
そして最後に豊島名人が猛攻を仕掛けるも
110手目 △2二飛車を見て豊島名人が投了
最後に打ち付けるは自陣飛車、これで詰まない
シリーズは挑戦者の4勝3敗で木村一基新王位が誕生
プロ入りから22年、46歳の初タイトルだった。
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木村一基王位は人柄も良く、解説も分かりやすく面白い
でも勝負師であって、負けず嫌い「百折不撓」の名がよく似合う人物だ
王位戦のインタビューでは「(まずは)一つ勝てれば」なんて弱気そうに見える言葉もあったけれど
一勝の重みを彼自身が何より知っていたからだと私は思う
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10年前の棋譜コメント
『この日が来ると、信じていたのだろうか』
個人的なイメージでしかない、でも確信はある
棋士 木村一基は この日が来ると、信じていたのでしょう
木村新王位 タイトル獲得 おめでとうございます!






