2月号
『枯はちす』
枯はちす今日の労苦は今日のもの
吾子の手の吾によく似て冬柏
延段に歩調合ひけり石蕗の花
青鷺の孤高冬めく池の面
文机に零るる言葉一葉忌
「炬燵」「人参」
それぞれの一日一つの炬燵かな
炬燵居の嘘めく祖父の武勇伝
人参や人の明るき商店街
3月号
『冬桜』
冬日向図書館前に卵売
中庭のベンチ小春のハムサンド
縄美しく編まれ雪吊支度かな
喜びを記す手帳や冬桜
鎹は大人になりぬ大晦日
「師走」「鶴」
新宿をブラウン運動して師走
空に描く銀の流線鶴舞へり
4月号
『初明り』
着膨れて父退院の風の朝
初明り戦禍に眠る子の呼吸
言ひにくき事から話す初電話☆
憂きことは省き綴るや初日記
決断は先送りして福笑
「氷」「門松」
ままごとのお菜に小さき氷かな
門松を一瞥もせず地域猫