『チェリまほTHE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』

2022年/日本/104分/監督 風間大樹

 

 

これはドラマの映画化ですが、内容的には続きになります。

だからドラマを観ていないとちょっと苦しいところがありますので、ざっとあらすじ。

 

文具会社に勤める安達清(赤楚衛二)は、人見知りで団体行動が苦手なタイプで30歳まで女性と付き合ったことがない。

「30歳まで童貞だと魔法使いになる」という話を聞かされたものの、実際、30歳になると「触れた人の心が読めてしまう」という魔法が使えることを知る。

 

たまたま同期で安達とは正反対のハンサムで仕事ができて社内の人気者、黒沢優一(町田啓太)とエレベーターで乗り合わせて触れた時に黒沢が自分のことを好きだ、ということを知って驚く安達。

 

男同士だし、黒沢は外見も仕事も性格も完璧な男なのになぜ?

 

だんだん黒沢は安達に近づいてきますが、心が読めてしまう安達は知らなくていいことまで知ってしまい、アワアワするばかり。

 

そんな中、今まで誰にも気づかれない影のような存在だった自分を見てくれている人がいる、ということに気が付いてだんだん黒沢の気持を理解するようになる安達。

そして告白のあと、いろいろありますが、両想いになる、というのがドラマです。

 

 

さて、映画は両想いになった二人から始まります。

一緒に山へ行ったり、初詣に行ったり楽しむ二人ですが、安達に突然の転勤話。

長崎支社の出店スタッフに任命されたのです。

 

昇給のチャンスでもあるのですが、せっかく黒沢と両想いになれたのに遠距離になるのも・・・・・・と悩む安達。

 

黒沢は寂しい気持をこらえて、キャリアアップを応援すると言ってくれますが、本心がわからず思わず魔法を使おうとするとく黒沢に

「そんなに信用できないの?」

と言われてしまう。

 

 

長崎に転勤することを決めたものの、実際、新規オープンの仕事は大変で仕事に追われてしまい、ついには過労で倒れてしまう安達。

 

 

それを知って長崎に駆け付ける黒沢。そこで2人は改めてお互いが大事な存在だと確信します。

そして長崎転勤から戻ったら一緒に暮らし、お互いの関係を両親家族に伝えようとします。

安達の家族は快く認めてくれますが、黒沢の母が受け入れられず・・・・・・

 

 

この映画は2つの大きな芯があります。

・何事も自己評価が低くて奥手だった安達の成長。

・ドラマでは片思いだった黒沢の妄想する夢が叶う物語。

 

撮影期間は2週間といういわゆる「2週間映画」なのですが、ドラマの時と同じスタッフ、キャストであのドラマの世界再びで、ドラマの映画化としてはそれが正しいと思います。

変なオリジナルのドラマや事件は要らないので、その後のふたり、を丁寧に描くことが最優先だし、ファンもそれを望んでいると思います。

 

私も目障りな人がいない、というあの世界観が大好きなので、映画の大スクリーンで安達黒沢の2人が見られて満足です。

ただの眼福映画になっていないのは、やはり2人が付き合うことで変わっていくその変化を丁寧に描いているところですね。

それはとても幸せな時間で、いつまでも続けばいいと思う。

 

この映画の冒頭は安達が移動図書館で魔法の絵本を手にとることことから始まるのですが、魔法がとければおしまい、ではなく黒沢と共に歩む人生はこれからだ、というラスト、余韻があっていいですね。

ただの男同士の恋愛を描いたBLではなく、ドラマと映画を通じて一人の青年の成長を描いた物語。