『ピスタチオ』梨木香歩(ちくま文庫)

 

梨木香歩さんの描く世界は、いつも遠い目をしているような気がします。

色を感じたり、匂いを感じたり・・・身の周りの雑事を飛びこして、風景や、人を遠くに見ているようであり、かといって、突き放したものではなく、マクロ的に細かいこと、特に自然や動物に対して細胞レベルの顕微鏡をのぞくような世界でもありますが、それでも顕微鏡の中にまた遠くを見つめている。そんな気がします。

 

 この物語は、後半、アフリカのウガンダが舞台となります。

描かれるのは、精神世界、魂、浄化といったことになるのでしょうか。

自然や動物に囲まれている世界と同時にアフリカ独特の精神世界を日本人のライターである棚という女性が、取材ということを通して、見つめていきます。 

 

 棚は若い頃、ケニアのナイロビで過ごしたことがあって、アフリカには三原という知り合いがいます。

三原から知らされた、アフリカの呪術医療についての取材をしていた片山という男の存在。

そして、片山は取材が高じて、アフリカ呪術師に弟子入りして、患者を持つまでになったという。

しかし、その取材の成果としての呪術に関するアフリカの話を集めた本に興味を持ちますが、三原から知らされたのは、片山とその周辺にいた人たちの不思議な亡くなり方。

 

 アフリカ、という大地に先祖代々伝わる、呪術というもの。

細かいしきたりがあり、今でも、西洋医学に頼らない、すべてのものに精霊がやどる、特に水、洪水に関することにはとても敏感なウガンダの人たち。

その世界の住人である女性、ナカトはこう言う。

 

 患者が欲しがっているのは、ストーリーなんだって、カタヤマはよく言ってました。

特に人の恐ろしがる病気は。なぜそんな病気になったのか、納得できる物語が欲しい。

 

 棚は、不思議をすべて受け入れることができる大人の女性です。

ユーカリなどすぐに育っても、根付かない・・・そんな中、ピスタチオという木の存在を知る。

ピスタチオは、実がなるし、実益もかねるいい木ではないか・・・ピスタチオの木はアフリカのささやかな救いになるのでしょうか。

梨木さんのこの世界は、ピスタチオ・グリーンで淡く、かつしっかりと彩られています。