『牛への道』宮沢章夫(新潮文庫)
![]() |
牛への道 (新潮文庫)
562円
Amazon |
缶コーヒーを買おうと思ったら、出て来たのはスポーツドリンクだった。
あれ、と思ってもう一度買ったら、出て来たのはスポーツドリンクだった。
うーん、じゃ、スポーツドリンクを押せば、缶コーヒーが出てくるのか?
スポーツドリンクだった。
・・・たくさんのスポーツドリンクを抱えて途方にくれる「私」
「そのことで、何かを伝えようとする意思はたいしてないのだが、せめて、あなたの時間が軸がねじ曲がった、不可解な空気で充たされればと思うのだ。」
とそっけないまえがきです。
宮沢章夫さんは演劇の人なので、演劇の人ってやはり独特の視線を持っていて、同じ所を見るにしても、これは変!ではなくちょっと変かもしれないけれどなんとなく納得してしまう、そんなところを見抜く。あくまでも、深くではなく、なんとなく、ああ、そうねぇ・・・という浅い納得です。
「三行目の感動」では、五七五の俳句を英訳したものをまた、日本語にしたものを
読んで、その訳の面白さ、特に三行目の余韻について書かれています。
これは古い池である。
蛙が飛びこむ。
おお、水音よ。
最後の「おお、水音よ。」にいたく感激した宮沢さんは俳句の英訳について
・韻を踏まない。・三行で書く。・三行目で唐突に感動する。という特徴を見抜いています。
痩せた蛙である。
「負けてはいかん!」
一茶は励ましている。
これなどは三行目の感動というより、三行目の唐突ですね。
この世に、絶対に読まなければならない本とか、絶対おすすめの本とか、絶対がつく本(本だけでなく何でも)はないと思うので、この本も絶対読んでね、という空気ではなく、なんだかなぁ、これ、どう思います。いかんですなぁ。いや、いいんじゃないですか?素敵ともとれるし、どうでもいいともとれます、みたいなスタンスがくすくす笑って読めます。
これはこれで、至福の読書の時間でありました。

