『細雪』 谷崎潤一郎(新潮文庫)上・中・下巻

 

 

 

 

 

 

 

 大人になってから、読みたい本というのがあって、この『細雪』はそういう本の一冊でした。

若い頃、古本屋で買ったのですが、その時は読めませんでしたが、年をとって改めてずっと通勤電車や仕事の昼休みに上中下巻を読み継ぐことができました。

 

 こうして読んでみると会話文が多くて(船場言葉)読みやすい物語でした。

上巻は、上流階級の四姉妹が着飾って花見に行く所が圧巻。

上流階級の楽しみというものをここまで書きつくしていると感心しました。三女、雪子のお見合い、四女、妙子の恋愛の行く末もまだ始まったばかり。先が楽しみでした。追われるようにして中巻へ。

 

 中巻は、四女、妙子の恋愛模様が中心かもしれません。周りがお膳立てをしてくれるお見合いが当然と考えている三女、雪子に比べ、四女、妙子は家が豊かだった、華やかで派手だった頃を知らないだけに自由恋愛を選びます。

雪子がお見合いばかりしていて、人まかせのようですが、昔のお嬢様なんてそんなものでしょう。本人もそれが当然という世界。

 

 災害、蛍狩り・・・他の谷崎文学のように良い意味でのけれん味はない、淡々と一家の様子を語る口調に少々、驚きましたが、大変読みやすく、これが戦前、戦中の上流家庭なのかと感慨しきり。お見合いで、事前に相手方をくまなく調べるのは後々の事を考えると今よりも慎重で良いのかもしれない、と私の年になると思ってしまう。好きになって何も見えずに結婚することが純愛とは限らない。先々の事もきちんと現実として考えないと。ましてや、時代が昔で上流階級うるさそうです。

 

 下巻は、またまた三女、雪子の見合いと四女、妙子の恋愛の行方と意外な幕切れ。こうして読むとこれ、といった大事件は起こらないけれど、人間が生活していく中で身分に関係なく、何かしら「事件」が起こって、心境の変化も色々あるのだと思います。

 

 四姉妹の物語として有名だけれども、読み終わってみると、結局、三女、四女の義兄、父かわりであり、次女の夫である貞之助が立派。性格は違っても仲は悪くはならない四姉妹のあり方を通して、家族というものをしみじみと考える物語でした。今や自分と比べるには遠いけれど、身近な物語と読めてしまうのはさすがです。