鳥山明さんの仕事場
なぜ残せない?
クールジャパン戦略との重なり
人気マンガ「ドラゴンボール」などを手がけた故・鳥山明さんが、仕事場に使った愛知県清須市内の建物の解体工事が進んでいると毎日新聞が報じました。残念がる声、遺族の考えに理解を示す両方の声もありました。一方で「残す道はなかったの?」という、素朴な疑問が思い浮かぶ人もいるでしょう。
鳥山さんの仕事場が公開されたら、世界中から人が集まり、唯一無二の観光資源になっていた可能性があったのではないでしょうか。これまでエンタメを現場で取材した経験を踏まえて、なぜ残せなかったのか
エキスパートの補足・見解
行政の立場から見ると、オーバーツーリズムの解消、税金の公的投入、業務負担の増大と問題が多いのです。建物を公開するには、建築基準法や消防法のクリア、観光客の導線設計、トラブル対応なども予測できます。
エンタメの“聖地巡礼”を取材した経験から言えば、ファンの訪問で地域とトラブルになる例はありますし、埼玉県久喜市鷲宮地区のように、地域の理解を得られた成功例もあります。成功には、問題解決のスキル以上に、コンテンツを愛し情熱を持つ人材は不可欠です。
ポイントは、鳥山さんの仕事場の価値をどう判断したかです。日本は国策としてコンテンツ産業に力を入れると発表したにもかかわらず、“日本の宝”として残さず不要とみなしたわけです。ファンの「愛」の行き先の一つが、現地を訪れる“巡礼”にあることを無視していると指摘されても仕方ありません。
残念ながら批判されたクールジャパン戦略と重なります。今の日本の戦略は、クリエーターやエンタメ各社の不断の努力に、後追いをしたような側面があります。本気ならばエンタメ遺産の保存に対して、法整備や予算を出す仕組みがあっても良いのではないでしょうか。だそうです。
