「正社員でも苦しい」31歳男性。

都内手取り20万円の現実

 
物価上昇が続くなか、「働いているのに生活が楽にならない」と感じる人は少なくありません。
とりわけ都市部では、家賃や食費といった固定費の負担が大きく
収入が一定あっても可処分所得が限られるケースが目立ちます。
正社員であっても安心とは言えない現実が、静かに広がっています。
 
 
 

「正社員なのに余裕がない」ひっ迫する生活

都内で一人暮らしをする

会社員の中村亮太さん(仮名・31歳)

は自身の生活についてこう語ります。 

 

 

 

 

「手取りは月20万円ほどです。正直“余裕がある”と感じたことは一度もないです」 中村さんはIT関連企業に勤務する正社員。大学卒業後に入社し、勤続8年になります。ボーナスはあるものの、基本給は大きく上がらず、手取りはここ数年ほとんど変わっていないといいます。 「家賃が一番きついですね。ワンルームで8万5,000円です。都内だとこれでも安いほうだと思いますけど…」 収入の約4割を占める家賃に加え、光熱費や通信費、食費が重くのしかかります。最近は電気代や食料品の値上げもあり、月々の支出は以前より確実に増えています。 「スーパーに行く時間も変わりました。夜遅くに行って、割引シールが貼られたものを選ぶのが当たり前になっています」 そう言って苦笑する中村さんのスマートフォンには、近隣スーパーの値引き時間を記録したメモが残っていました。 「20時半を過ぎると半額になることが多いんです。そこを狙って買いに行きます」 総務省『家計調査(2024年)』によると、単身勤労世帯の平均消費支出は月約17.3万円で、特に住居費と食費の割合が高い傾向にあります。さらに都市部では家賃が全国平均を大きく上回るため、同じ収入でも可処分所得に差が生じやすい構造です。 「節約しているつもりでも、給料日前になるとほとんど残っていない。貯金は月1万円できればいいほうです」 将来への不安も、日に日に大きくなっているといいます。

 

 

「働いているのに貧しい」――抜け出せない構造と向き合う

中村さんが特に違和感を覚えているのは、「正社員=安定」というイメージとのギャップです。 「学生の頃は、正社員になれば生活は安定すると思っていました。でも実際は“ギリギリ回せている”だけです」 給与が大きく伸びない一方で、社会保険料や税負担は着実に増えています。手取りが思うように増えない状況は、多くの若年層に共通する課題ともいえます。 国税庁『令和6年分 民間給与実態統計調査』によれば、30代前半の平均給与は449万円ですが、ここから税金や社会保険料が差し引かれると実際の手取りは大きく目減りします。 こうした状況のなか、中村さんは副業を考えたこともあるといいます。 「動画編集とか、スキルを活かせそうなものを調べたりもしました。でも、平日は仕事で疲れてしまって、なかなか踏み出せなくて…」 休日も、基本的には節約を意識した過ごし方になります。 「外食は月に1回あるかどうか。友人と会うのも控えがちになりました。誘われても、正直お金のことを考えてしまいます」 生活の質を下げてでも支出を抑える――そんな選択を続けるなかで、精神的な負担も無視できなくなってきました。 「“これが普通なんだ”って自分に言い聞かせることもありますけど、ふとしたときに虚しくなることがあります」 中村さんは、将来的には転職や収入アップも視野に入れているといいます。