「うんこミュージアム」はなぜ広がったのか
「こんにちうんこー!」「ありがとうんこー!」「ナイスうんこ!」――。 そんな、ちょっとふざけた言葉が飛び交う施設が、全国的に広がっている。たのしいミュージアム(東京都渋谷区)とカヤック(神奈川県鎌倉市)が共同で展開する「うんこミュージアム」だ。「うんこカワイイ唯一無二のエンタメ空間」を掲げ、カラフルなデザインやユーモラスな体験でうんこをエンタメ化している。 同施設は2019年3月に期間限定で横浜にオープンしたところ、根強い需要があるとして、同年8月、東京お台場に常設店を設けた。その後、国内外で期間限定開催を重ね、2025年には名古屋と沖縄にも常設店をオープンした。2025年12月には、累計来場者数が250万人を突破している。 「開業前はネガティブな反応も想定していたが、いざフタを開けると好意的に受け入れられた」と、たのしいミュージアムの小林将社長は話す。なぜ、うんこをテーマにしたミュージアムが支持を得ているのか。小林社長
語りました

うんこの概念を“ポジティブ”に変える
うんこミュージアムでは、うんこをかわいく表現することにこだわっている。赤やピンク、青などカラフルなうんこで空間が彩られ、うんこに尻尾を生やしたキャラクター「うんこ動物」もいる。 「10~30代の若年女性をメインターゲットに据えています。“汚い、臭い”といった従来のうんこのネガティブな概念を排除し、ポップでかわいい空間を目指して、デザインや体験設計をしています。うんこの概念をポジティブに変えることで、驚きや楽しさを提供したいと考えています」 施設内にはいくつものアトラクションがあるが、中でも人気が高いのは、入り口を入ってすぐの「MY UNKO MAKER(マイうんこメーカー)」だ。ずらっと並ぶカラフルな便器から好きな色を選んで座ると、カラフルなうんこが便器に登場する。これを「マイうんこ」と呼んで、棒を取り付けて写真撮影のアイテムにするほか、お土産にもなる。 うんこの火山「ウンコ・ボルケーノ」も、定番人気アトラクションの一つ。大きなうんこのオブジェから、大量のうんこが勢いよく噴火するものだ。クリスマスやハロウィンなど季節によって演出を変えている。 そのほか、うんこダンサーズと一緒に踊る「ダンシングうんこルーム」や、全力で「うんこ!」 と叫べる「うんこシャウト」などもある。 「うんこだらけの空間でスタッフが元気よく『うんこ』を連呼しているなど、最初は面食らうと思いますが、だんだんとその世界観になじむような価値観の変化を体験していただくことを期待しています。最初から『うんこ!』と叫んだり、踊ったりするのはハードルが高いので、体験の入り口は『便器に座る』という恥ずかしがらずにできるコンテンツとしました」
日本人は「うんこ」好き
うんこミュージアムは、なぜ全国的に広がるまでに人気を得ているのか。小林社長は「日本人はうんこが好きなのだと思う」と自身の見解を示した。 「私たちはうんこのエンタメ化に本気で取り組み、子どもだけでなく大人も満足できる施設を目指しています。季節限定のイベントも頻繁に展開し、リピーターを飽きさせない工夫も取り入れています。そうした要素に加えて、そもそも日本人はうんこが好きなのだろうなと。 その理由は、いくつかあると思います。まず、農業国で古くから人間の糞尿を肥料とした下肥(しもごえ)を利用するなど、排泄物が生活に密接している。糞尿が稲作に有効であるためか、『うんこの神様』のような考え方もあります。また、自然などあらゆるものに神聖さを宿らせるという日本人の思考も関係しているかもしれません。そうした背景から、身近なうんこをコンテンツとして楽しむ発想につながっているのかなと思います」 うんこをテーマにした人気事業といえば、シリーズで累計1000万部を超える『うんこドリル』(文響社)が挙げられる。うんこをモチーフにしたキャラクター「うんこ先生」を登場させたり、全ての例文に「うんこ」を使ったりする異例の内容だ。2017年3月に発売した「うんこ漢字ドリル」は、出版から2カ月で累計発行部数が180万部を超えるヒットになった。 小学生男児をターゲットにするマンガ雑誌『コロコロコミック』(小学館)もまた、「うんこ・ちんちん原理主義」を掲げて、男児の心をつかんでいる。紙面にそれらを散りばめるほか、うんこ派・ちんちん派を決める「うんこちんちん総選挙」などの企画も盛り上がっていた。 いずれも子どもをターゲットにした事業ではあるが、保護者にも受け入れられていて、小林社長が言うように「日本人はうんこ好き」なのかもしれない。 「今年は、既存の3店舗以外に新たに国内で常設店を開業予定です。日本発のIPとして育成し、2027年以降は海外での常設展開にも挑戦していきたいですね」 日本の新たな「kawaii(かわいい)」文化として、うんこミュージアムは海外にも広がるのだろうか。
