『前橋ウィッチーズ』を“1話切り”せず見てほしい理由。

 

『虎に翼』の脚本家が

 

 

「今の若者」に向き合った秀作

 
 

テレビアニメ『前橋ウィッチーズ』(TOKYO MXほか)の最終話となる第12話が、6月22日深夜に放送されました。

ここでは、まず大切な「前置き」を示したうえで

連続テレビ小説『虎に翼』(NHK)の脚本を手掛けた吉田恵里香だからこそ実現できた

「多くの人、特に若い世代に届けたい」と心から願える魅力と特徴を、3つの項目に分けて記していきましょう。

先に申し上げておくと、この『前橋ウィッチーズ』はいわゆる「魔法少女」×「アイドルもの」のアニメでありつつも

「お色気」描写や「恋愛」要素は徹底的に避けており

だからこそ現代の若者が直面するさまざまな問題に向き合った、挑戦的かつ誠実な作品だったのです。

 

連続テレビ小説『虎に翼』の吉田恵里香が脚本を手がけるテレビアニメ『前橋ウィッチーズ』が素晴らしい内容でした。『虎に翼』との共通点のほか、現代の若者が直面するさまざまな問題に向き合った、挑戦的かつ誠実な特徴と魅力をまとめます。(※画像出展:『前橋ウィッチーズ』公式Xより)

「第2話のCパート」まで見てほしい明確な理由

 

正直な感想として、この『前橋ウィッチーズ』は、作画や楽曲のクオリティーが高いことを前提としつつも、「第1話は入り込みづらい」作品だと言えます。見る人によっては「必要以上の拒否反応を覚えても致し方がない」特徴があるのです。

その理由の1つが「アニメ的な誇張のあるキャラクター」。例えば、口ぐせが「エモエモ最強」や「チョコちゃんカッター」だったり、ことあるごとに「無理」という言葉を連発する口の悪い女の子もいます。それらと相対するような、落ち着いた言動の女の子もいるのですが、それにしたって極端なのは間違いありません。

あらすじに「強引さ」を感じる人もいるかもしれません。女の子たちがいきなり「魔法のお花屋さん」の店員となり、歌って踊るパフォーマンスを経て、お客さんのお願いをかなえたことで貯まる「マポ(魔法ポイント)」を集めて、自分たちは「魔女」を目指す……という設定からして、「要素が渋滞しており、説明的すぎるし都合が良すぎ」と感じる人もいるでしょう。

 

さらにギョッとする特徴は、キャラクターたちによる「暴言」です。第2話の終盤および、第6話のCパート(エンディング曲の後のシーン)で飛び出した言葉の数々は、ストレートに「人の心を傷つける」ものでした。

しかし、この『前橋ウィッチーズ』のすごいところは、そうした「キャラクターの極端な口ぐせ」「都合のいい設定」「暴言」という賛否両論を呼ぶ要素が、後に「反転」し、ある意味では伏線として回収され「意味が変わってくる」ことです。

それがはっきりするのが、第2話のCパートで明かされる、とある「秘密」です。それまでは正直「ノレない」と思っていた筆者も、ここで襟を正しました。これは、アニメファンの大人が見るだけではもったいない、現代にふさわしいメッセージ性を打ち出した作品なのだと……。

そのため、第1話を見て「合わない」と思った人も、第2話のラストまでたどり着いてほしいと、強く願わずにはいられないのです。

 

 

気になるところもあるけど、届いてほしい

正直に言って、この『前橋ウィッチーズ』には気になるところもあります。

例えば、第6話のラストの暴言は、後から事情を知っても「さすがにあそこまで言わせるのはやりすぎでは?」と感じてしまいました。作品としての“ショッキング”さが優先されていることによって、違和感を覚えたのです。また、第5話の「デジタルタトゥー」という大きな問題については、現実にはない魔法が絡んだ、やや甘い方向性でまとめられた印象も抱いてしまいました。

舞台となる群馬県前橋市についても、メインで登場するのは「シャッター街」です。それでは、前橋本来の魅力が伝わりきらず、「東京に近い都市」以外では、物語上でもあまり効果的になっていないのでは? と思う部分もありました。

それでも全体的には、やはり現代にふさわしく、多くの問題に誠実に向き合った作品であることは確かです。第10話ではとてつもない衝撃と感動が待ち受けていましたし、最終話となる12話を見れば、また印象も変わるでしょう