「串から抜かないで」
焼き鳥店主が本気で怒るその理由
焼き鳥を串から外すか、否か。たびたび議論になる飲み会の作。
「みんなに行き渡るよう、外して取り分けたい」という気遣いによるものから
「串にかぶりついて食べるのは下品」という価値観まであるらしいですが
そんな中、「串を抜くたびに値段が上がる」と警告する焼き鳥屋が東京
新橋にある。冗談かと思ったら、本気らしい。そこまでするのには、理由があり。
【中嶋真希】 ◇「抜くなら焼き肉屋へ」 「串から抜かずに食べてください」
身のプリッとしたレバーが運ばれてくると、店員から念を押された。
壁には、「串をぬくなら焼肉屋へ行け!」と書かれたポスター。
その下には「抜くたび値段が上がります」という小さな注意書きまである。
焼き鳥店「出世酒場 大統領」は
客への注文が多い
「うるさい店」として知られる。それでも、店を訪れた金曜の午後4時ごろにはほぼ満席。
レバーをほおばると、口いっぱいにじんわりとうまみが広がった。
翌週、平日の朝に仕込み中の大将・沢崎誠さん(52)を訪ねた。
なぜ、串から肉を外させないことにこだわるのか。沢崎さんは、笑いながら言った。
一口目で心をつかむのが、うちの焼き鳥だからね。
どの焼き鳥屋も刺し方が違って、二口目に大きい肉を刺す店もある。
うちは、一口目でおいしいって思ってもらいたいから、最初が大きいの。
体育会系の俺と同じ、逆三角形体形の焼き鳥だよ」
自慢の焼き鳥は、沢崎さんが午前5時から仕込みを始め
8時半になると他のスタッフも参加する。仕込みは、昼過ぎまでかかる。
沢崎さんと一緒に仕込みをしていた
次男の嵐(あらし)さん(27)は、肉を切りながら、大きさごとに順番に並べていた。
「串に刺す前の段取りが大事。串から抜かれたら、この作業の意味がなくなっちゃう」と語る。
肉を並べ終わると、沢崎さんが手際よく串に刺していく。
肉のカットが大事」と、沢崎さんは言う。
あまり小さいとおいしくなくなる。
目いっぱいに、一口でほおばれる大きさにしている」。
肉の大きさ、串に刺す順番、焼き方。串にかぶりついた時に
「おいしい」と思えるよう、計算しつくした一本が提供される。
抜くたび値段が上がります」というルールは
もちろん本気」と言う。
これだけ手間をかけて仕込みをしているのに
勝手に串から肉を抜く客がいるから怒っているんだよね。
串から抜かない客、次も来てほしい客には、いい肉を出すよ。いい客には、いい肉を食べさせたいから」
沢崎さんは、和食の板前を経て
15年前に店をオープンした。
「串外し禁止」のルールは
開業当初から。
それから
「飲めない人はお断り」
「おひとり様お断り」
「食べ残し1本1000円」と徐々にルールが増えていった。
「おひとり様お断りっていっても、2、3人なら必ず入れるってわけじゃない。
今はもう、店もいい客を選ぶ時代。郷に入っては郷に従えの遊びができない人は苦しい店。
でも、それができる人には居心地のいい店だよ」と沢崎さん。
「食べ残し禁止も、せっかくいただく命なんだからっていう理由。
そういうことも考えながら、あとは食べて飲んで、楽しんでいってほしい」と思いを語っていた。
◇SNS普及で論争過熱 マナーという観点ではどうか。
企業のマナー研修を行い
マナーに関する著書も多いマナーコンサルタントの西出ひろ子さんは
「串に刺して焼いて、それを持って食べるというのが
焼き鳥のそもそものスタイルですから。
そのまま食べればいいんですよ、ということがまず大前提です」と言うそうです。
