「じぶんのこと
好き?」
ホンヤマさんは、
私が何を言おうとしているのか
じぶんが試されているのか
これから何が起こるのか
たぶんそういう種類の迷いを一瞬だけ瞳ににじませて、
一息おいてから
ちからづよく
「うん
自分のこと
好きだよ」
と
私の目を見て、
言った。
それで私は
「そっか。
よかった、
私もね、ホンヤマさん、
私も、私のことが好きだよ。」
と、
かれに言ったのだった。
肩透かしをくらったようなかれの目をとらえて、
私は話し始める。
「聞いてくれる?
今の私は
じぶんのことをすんなりと好きだって言える。
仕事が好きだし
じぶんを信頼してるし、
すすんで、色んなことに責任を取れるようになった。
けど
それは、
私が好きだと思う人たちが
『ササキさんのことが好きだ』
って
言ってくれるからなんだって思うんだ。
私が好きな人、
私がだいじだと思う人たちが
私を肯定してくれるから。
私はその人たちに
ホントにありがとう
私を肯定してくれてありがとう
じぶんのことを信じていいんだと思わせてくれてありがとう
って
すごく感謝してる。
そこしか拠り所がないんじゃないかっていうくらい
心をたくましくさせてもらってる」
思いもかけず、胸がざわつく。
私は夜の公園の
くろぐろとした闇に目を凝らす。
羽虫がひっきりなしに横切る、
その光景に目を細める。
かれの目が見られない。
けれど
高まる予感に
自分の中に生まれようとしている確かな予感に
冷静に向き合おうとする理性のはたらきも感じている。
「ホンヤマさんのおかげで
私は、私を肯定することができる。
じぶんのことが好きだって
私は間違っていないって、
信じることができる。
それで、んーと…
何が言いたいかというと…笑
ホンヤマさんもいま
じぶん自身のことが好きだっていってくれたね。
私は
だから、
今こそあなたを肯定したい。
あなたにも自分を信じる力をお返ししたい。
だから、言います」
こんな展開になるとは
まったく考えていなかったというのに、
私の言葉は力と確信に満ちていた。
そしてさいごのひとことだけ、
その必要があると思って
逸らしていた目を彼の方に向けて、
言った。
「私も、
あなたが好き。」
この瞬間、
私は
じぶんとかれのことを全肯定していた。
疑念も
雑念も
理屈もなにもなく、
たたまれていた小宇宙が広がって、
すべては私のものになった。
たったいまこの瞬間、あたらしい愛が生まれようとしていて、
私はそこに堂々と、二本の足で立っていた。
これから
私のこころとからだに起きること、
始まることを
何も知らず
恐れることもせず。

