シャトー・ラフィット・ロートシルト1981
まだワインの「ワ」の字も知らないころに、大層なものを飲ませていただいた記憶があります。
飲んで「これ好きだな」と感じて、ラフィットという名前だけを覚えているくらいの記憶なのだけれど…
それから10年近く経ってるでしょうか。
今年(2010年)の末に再びラフィットを飲む機会が現れました。
フランス南西にあるボルドーは国内最大のワイン産地で、ブルゴーニュなどの生産者が「ドメーヌ」と呼ばれるのに対し、ボルドーでは「シャトー」と呼ばれています。
12世紀中頃の王妃がイングランドの王子と結婚したことから、フランス南西部はイングランドの支配下になり、イギリスとの市場が開拓されました。
多くのフランスワイン産業を作ってきたのが修道士なのですが、ボルドーに関してはイギリスなどを相手にする商人が推進してできた産業なのです。
やがてブドウを栽培する村名の付いたワインだけでなく、城を意味するシャトーの名前を付けたワインを作り、生産地を細かく分けたことから「シャトー○○」というワインが流通するようになりました。
19世紀になると、パリ万博が開かれることに合わせてボルドーワインの格付けが行われました。
世界中から集まる人たちに向けての指標作りが必要になったのです。
そこで1級を与えられたシャトーは4つ。
20世紀にシャトー・ムートンが1級に格上げされて5つになって以来「ボルドー5大シャトー」として、現在まで世界中の愛好家の垂涎の的となっているのです。
その5大シャトーのひとつが「シャトー・ラフィット・ロートシルト」なのです。
ワインに心酔している人は「ワインは観賞するもの」とか「観賞に値するワイン」とか言ったりします。
香り・色・味わい・舌触りなどから風景を想像することができるワインに出会うと、ただ美味しいというだでは物足りなくなってしまうものなんです。
1981年に収穫されたブドウを使って作られたラフィットのひとくち目は、想像以上に控えめでした。
きっと飲んだ人の多くが期待外れと思うでしょう。
けど、よく香りを探ってみると土のような香りがします。木のような香りもします。
そしてどことなく湿り気を感じるようになってきました。
まるで曇り空の森の中にある池のほとりではないかと。
そう解釈しつつちょっと残念がっていると、間もなく空が晴れてきたような感覚が生まれてきました。
温かい光。
そう思っていると目を覚ましたかのように花や果物の香りがしてくるのです。
「あっ、チョコみたいな香りがする」
「コショウのような風味が残る感じもする」
そうやって、ルビーとレンガを合わせたような色のワインの中から、色々な要素を見つけていくのがまるで宝探しをしているかのようで楽しいのです。
作られたブドウの特性を確認しては知識を深める時もあるけれど、それらの要素を集めて作りだした世界を旅する時もあります。
今回のワインは1981年のものだったので、その年まで時間をさかのぼって、きっとこんな景色があったんだろうなと勝手に想像してみたりすることが、例えば観賞だったりするのでしょうね。
ただ美味しいというだけではない複雑なもの。
収穫年と、グラス内で風味が変わるという2つの時間の要素にワインの歴史が加わることで、深遠で郷愁を覚えさせてくれたワインでした。
