願い事 142 奈々、刀剣女子になる?!

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千葉市立郷土博物館に入るふたり。
2階で開催されている「房総の刀剣―千葉に伝えられた平安から江戸の名刀」がお目当てだ。

「『房総の刀剣―千葉に伝えられた平安から江戸の名刀』…雅樹さん死神を打ち抜く刀を探しに?」
「そうだよ奈々。おあつらえ向けにここで刀剣の特別展示…まるで俺にこの刀剣で戦えって言ってるみたいだ」

ずらりと並ぶ刀剣。
その刀剣たちと会話をする。
時間の経つのを忘れて刀剣に魅入る。
 
「奈々、ごめん退屈だろう…」
「いえ、雅樹さん刀の刃紋…美しいです」
そう言うと刀の刃紋を立ったりしゃがんだりしながら眺める奈々。

「目的がハッキリとした道具は機能美に優れていて好きです…」

「奈々? もしかして戦車とか護衛艦とか戦闘機とかも好き?」

「好きです! 女の子なのに可笑しい? 嫌いになる?」
奈々がおずおずと言う。

「全然可笑しくない! 俺も大好きだよ! 奈々と一緒で無駄のない機能美が好きなんだ。なんか‥案外趣味合うね」
なんだか嬉しくなる。

「本当! 奈々、女の子の癖にって嫌われるかと思った。良かった」

「むしろ嬉しいよ奈々と共通の好きなものが出来て! 俺、朝霞基地に観閲式とかも観に行ったもん。10式(ひとまるしき)戦車の大行進! この後ゴジラ出てくるんじゃないかって思った」

「良いな! 奈々も行きたかった」
「現実世界に帰って一緒に行こう! 次は確か観艦式だから、まっ参加抽選に外れたとしても一緒に横須賀辺りで眺めようよ」
なんだかウキウキして来る。

「うん! それ良いな。 なんだか楽しみになってきました」
意外な共通点がわかり、そしてまた現実世界に戻るモチベーションまで上がった。
良い傾向だ。
奈々には是が非でも元の世界に戻ってもらう。

ひとしきり話しをすると俺はまた武器となる刀剣を選ぶ。
奈々もまた刀剣を眺めはじめる。

『折れず、曲がらず 、良く斬れ』」の3要素を非常に高い次元で同時に実現させる刀剣。
暗黒の結晶、死神を貫き倒す武器に俺はこの刀剣をチョイスした。

死神は一点打撃攻撃に弱い。
であれば、わざわざ刀剣を用いる必要もなかったかもしれないが、刀剣の中でも太刀と呼ばれる物が打ち物とも呼ばれるのは斬ることよりは打つこと、すなわち打撃武器としての効果の方が重視されていたからだ。

そう言うことなら刀剣も十分利用できる。

そもそも日本刀の草創期からすでに武士の主戦術は騎射だったという。
騎射(きしゃ)とは、騎上から弓で矢を射ることだ。

また刀対槍の勝率が打刀が3で槍が7であったことから見ても、打刀や太刀は接近戦向きで、統制の維持されている集団が広い空間 で戦う場合は長柄武器と呼ばれる槍や薙刀などに対して不利だったことが知られている。

だが、死神と戦うには矢では力が足りないだろう。
矢は初速は早いが飛ぶ距離が延びれば延びるほどパワーは弱まる。
それでは死神は貫けない。

また接近戦で弓を一杯に引き、力をためる余裕はないだろう。
ましてや死神を目前にしてそんな気持ちのゆとりが持てるとも到底思えない。

であれば刀剣より槍の方が死神と間合いが取れる分有利とも思えるが、かえってその距離感が死神との間合いを狂わせる。

俺は死神との戦いの武器に刀剣をチョイスする。
死神に鋭い刀剣の突きを決めてやるのだ!

願わくば妖刀村雨や、平安時代中期の武将碓井貞光(うすいさだみつ)が酒呑童子退治に用いた降魔の剣である石切丸なんかが手に入れば気分は最高!

暗黒の結晶である死神を倒す武器として、石切丸なんて最高に気分が乗るね!
男にはその気になれる道具が必要な時があるのさ。

俺は奈々から借りたリュックの中からDT125Xから拝借した工具を取り出しショーケースをこじ開ける。

古伯耆、伝来國光、綾小路、手掻そして大太刀、
行光の計5振りを取り出した。

「雅樹さん、奈々もあれが欲しい。」
そう言うと奈々は小太刀である延寿を指差した。

「奈々? 刀剣に目覚めちゃった? 刀剣女子だな。しかし延寿とはゲンが良い! 」

寿には命という意味も含まれている。
命を延す小太刀、奈々が携えるに相応しい。

「いざとなったら奈々も死神と戦う心構えです!」
「ありがとう奈々心強いよ。だけど無茶はしないでくれよ。」

俺は延寿を取り出し奈々に手渡す。
心なしか奈々の目に強い闘志の光が差し込んでいる様に見えた。

死神との対決に向けて着々と準備を進める。
その過程で奈々の中にも何か変化が起き始めているようだ。

問題が生じた時、解決に向けて熟考することは大切だ。
しかし、行動することはもっと大切なのだ。

行動こそが事態を変える源。
奈々と俺の心が死神との対決に向けてひとつになって行く。


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