神の息・人の息 71

「セラ君久しぶり~!あら本当!セラ君どことなく精悍な顔つきになってる。」
リンダが一番にセラに声をかけ肩に手をやり、しげしげと顔を見て言う。
「リンダさんは相変わらずきれいだね。逢えてうれしいよ。」
セラは満面の笑顔でリンダに答える。
「きゃ~あのシャイなセラ君からそんなこと言われるなんて~。なんだかドキドキしちゃう~。」
はしゃぐリンダの横からもセラに言葉をかける男がいる。
「おいおいセラ、何言ってんだおまえは・・・っと本当に顔つき変わったな。」
リンダの夫であるリンダマンもセラの顔を見てそう言う。
「おっといけね!リンダマンさんもいたんだっけマズイマスイ、アハハ~。」
セラが陽気に笑うと周囲にいた仲間達もドッと笑い出す。
そんな中、人垣の後ろの方から冷たい声が聞こえてくる。
「あたしはそう言うセラの顔見たことあるよ・・・。」
セラがその声に気付き周囲を見渡す。
後ろの方からセラを見る鋭い目線を見つける。
「ん?おまえは・・・モコ?モコじゃないか!」
「モコじゃねーよ!マコだよ!ったく相変わらず何気に嫌みなやつだな!」
そう言うと後ろの方から躍り出てくる声の主。
「おぉ~マコだ!あれ?おまえもうちょっとモコモコっとしてなかったっけ?俺おまえのモコッとしたところ好きだったのにな。あぁ~そうか!アバターだからちょっと自分好みにしちゃったか?」
セラがさもありなんと言った風に言う。
「モコってなんだよ?確かにあの頃のあたしはちょっぴりポッチャリしてたけど・・・残念でした!あんたが寝ちゃった後にお陰様でこんなに美しくなりました~。」
そう言うと微笑みをたたえクルリと回ってみせる。
自分で言うだけあってマコは美しかった。
細身だがスッと張った肩のラインや、一重なのにそれを感じさせないほど大きな目は美しく強い意志を携えていた。
マコの横でリンダがおかしそうに微笑んでいる。
リンダにはセラの言葉で変わっていくマコの様子が良く見て取れたのである。
「ふ~ん・・・でおまえはあれから何してたの?」
セラが興味なさ気に言うが視線はしっかりとマコを見つめていた。
「あたしはあの時と同じよ。精神分析学をトコトン突き詰めた一生だったわ!そしてテラに勧められワールド内に来てからは・・誰かさんの『心』についてた~っぷり研究したわ!あんたならこの意味わかるでしょ。きっとすご~く嫌だろうけど。」
マコが薄く形の整った美しい口元に微笑みを浮かべる。
「ん?・・心の研究・・って俺の心か・・?あぁ~なんだよ!テラ!何でよりによってマコなんだよ~。」
セラは頭を抱え視線を床に落とし叫んだ。
「すまないセラ・・マコがセラの幼なじみだとわかってはいたのだが、彼女は最高に優秀な専門家なんだ。セラが復活後に性格変容していることを始め復活後のセラについて素晴らしい見識で次々仮説を打ち立ててくれたよ。私達はそれに基づきセラを守るための対策をしてきたんだ。」
頭を抱えるセラにテラが言う。
セラはテラの声が届いているのかどうか床を見たままだ。
「セラ?あんたの無意識の領域での活動は、研究すればするほど素晴らしいわ!これが私達にも応用できればもっと凄いことになるわ!」
マコが興奮気味に伝える。
「なんだよ、今更そんなこと言われたって・・・大体マコ!おまえもし逆に俺がおまえの心研究したって言ったらどう思うんだよ?嫌だろうが?ってか恥ずかしいだろ?テラ?テラだって俺の気持ちわかってくれるだろう?・・・ん?テラ?今テラの声がしたよな?テラ!どこにいるんだ?テラ!。」
セラが勢いよく辺りを見回しテラの姿を探す。
「セラ!私はすぐ側にいるよ。」
セラのちょうど斜め後ろから声がする。
「テラ!」
セラが叫びふり返る。
セラはふり返った先に実体を持ったテラを見つける。
電子の姿とはいえ初めてお互いを存在として実感するセラとテラであった。
続く・・・