願い事 25

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しかし・・・

この子はなぜ泣いているんだろう・・・。

平穏無事という言葉に嫌に反応していたようだが・・・。

確かに彼女の言うことが本当で、この状況に一年もいるのなら平穏なんて感じる暇もなかったにしろ・・・。

泣いているこの子は俺に発想を変えろと言う。

発想を変える・・・って?


一年前からここにいる彼女。

あなたはたった今ここに来たばかりだからと言わんばかりだ…。

だが…一年前って言うのがどうもひっかかってもどかしい。


窓の外の光景も気にかかる。

暗黒の津波はだいぶ後方ではあるが電車の通ってきた線路も次々に飲み込んでいる。

見慣れた光景が壊されていくのはあまり気分のいいもんじゃないな・・・。


車中に視線を戻すと未だ泣き続ける彼女の姿が嫌が応にも目に入ってくる。

これも・・・

あんまり気分のいいもんじゃないな・・・


どうしたら機嫌を戻してくれるかな。

発想を変えろったってこの猛烈に異常な光景を目の当たりにしてそんな余裕ないよ・・・。

やっぱりこの子に教えて貰うのが一番手っ取り早いんだけどな。

それにしても、この異常事態は細菌兵器によってもたらされたと言う俺の予測はハズレだったようだな。

確信は持てないけれど彼女も特に防菌しているわけでもないし、それどころじゃない異常事態が窓の外では繰り広げられているし・・・。

って事は何なんだ?

なんで誰もいなくなっちゃったって言うんだよ?

第一あの暗黒の津波は何だ?

気象現象でもあんなの見たことも聞いたこともないぞ?

竜巻の亜種か?

では死神は?

やはり単純な自然現象では片付きそうもない・・・。

と、もう一度泣いている彼女に目視線を落とす。

座席に座り込んで泣いている。

横顔が美しい。

出逢ってからまだ数分。

しかもあのバタバタ。

彼女のことをゆっくり見るゆとりもなかったが・・・。

良く見りゃすごく可愛い子じゃんか。

こんな可愛い子泣かしちゃったのか・・・。

益々罪悪感が増長する。

考えて見りゃ命の恩人だもんな・・・。

俺は思いきって彼女に声を掛けた。

「あの・・・嘘ついてるなんて酷いこと言ってごめん。俺も混乱していたんだ、許して欲しい・・・それからお礼を言わせてもらえないか?」

うつむき泣き続ける横顔が微妙に動きそして顔を上げた。

「お礼?お礼って?」

訝しげに問いかけてくる彼女の美しさに見とれる。

涙に濡れる瞳が美しい、なんて感じさせられたのは初めての経験だ。


続く