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神の息・人の息 52

「あの街の様子から類推すると‥自己愛‥の極限化?」
七瀬が途切れ途切れに言う。
「さすがだね七瀬。自己愛が極限化した結果があの過度な、と言うか極端な美容整形の習慣だよ。しかしこの現象の反面には自己存在の希薄化も関係して来ている。まるで変身するかの如く簡単に本来の自分を捨ててしまうわけだから‥‥結果的にもたらされる状況は‥‥」
「継続的に愛情を保持する事が不能になるわね‥‥。」
「その通りだ七瀬。およそ愛するという行為は相手への関心や相手の存在を自己に投影したりと言った精神的作業、またそこから自己を見詰め直し向き合うと言った様な行為が持続的に行われなければ成り立たない。さっきは知的水準と言う表現をしたけれど、そうではなくてイマジネーションが衰退、退化した事によってこの状況に必然的になったのではないかと考えている。」
「相手も自分もコロコロと変わるんじゃそうかもね。うわべだけを見て愛するわけじゃないにしても‥ビジュアル的にあまりにも安定性を欠く状況って言うのはやっぱり問題だわ。」
「アイデンティティの喪失も影響しているのだろうね。」
「確かに自分を、自己存在を深く愛せない様では他なる存在なんて怖くて愛せないわよね。」
「そうだね七瀬、気に入るところもそうでないところも含めてまず自己の存在を認める。そしてそこからどう生きるべきなのか自分と向き合う。そういった精神的活動の深層部がオミットされてしまっているようだよ。」
しばしの沈黙。
「七瀬‥結果的にアイデンティティの損失は自己存在を次世代に残したいといった価値観や欲求も吹き飛ばしてしまったのではないかと考えている。」
「きっとそうね・・・自分になんて誰にでもなれる。また自分も誰にでもなれるんですもの。例えそれが姿形と言った表層的な部分に限定されていたとしたって自分にも他者にも残すべき価値?愛着?執着?なんて湧かないでしょうよ。だって自分自身に何等オリジナリティを見出だせないんだものね。自に惚れずに誰が惚れてくれるって言うの?またこの状況を逆説的に捉えれば、自分ですら愛せない存在を誰が愛してくれるっていうの?って話しでしょう。」
七瀬が興奮しむきになる様子にテラが戸惑う。
七瀬はまるで自身の置かれた特殊な状況を呪っているかの様であった。


続く