2016年公開のスリラー。タイトル「息を止めろ」の通り、映画館で観客全員が登場人物と同時に息を止めて見た映画。

ストーリー(ネタバレ無し)

留守宅に忍び込んで盗みを働く3人の若者が、ゴーストタウンと化した住宅地に住む盲目の老人の家に盗みに入ると…えらい目に合います。当たり前です。目が不自由な人の家に盗みに入るとかクソ野郎です。

 

まじめな映画や小説で必要な事は「必然性」だと思っていて、ちょっと道理が通らない言動や展開があると「そんな事する?」「そんな事できる?」「そんなわけないでしょ」としらけてしまう。

 

小説やビデオなら最初から読み直しや見直しができるのだが、映画館だとそういうわけにはいかない。実際開始10分で帰りたくなる事もよくある。稀に「なるほどそういう事か、だからかあ」という嬉しい裏切りもあるのだが大半はそうでもない。

 

その「必然性」とか「常識」と真逆の事をやって楽しませてくれるのがホラー映画だと思っている。「なんでそんな時にシャワー浴びる!」「なんでまず電気点けない!」「開けてない窓が空いてたら即警察呼べ!」「クローゼットの中とかベッドの下とか殺人鬼なめんなよ!」「扉を開けて”おかしいわね、誰もいない”って誰もいない所で独り言を言っているお前が一番怖い!」など。

 

イライラ、ハラハラ、バカバカしいが面白い。イライラが頂点に達すると殺人鬼側の目線で「コイツだけは絶対殺してください」という楽しみ方もできる。ホラー映画とは神経を逆なでするコメディーだと思っている。

 

しかし、スリラーとなるとそうはいかない。緻密なストーリーと必然性をベースにちょっぴりホラーのイライラ感がバランス良く調和していないといけない。関西風に言うと「しっかりとしたフリとオチ」が必要。この映画はまさにそれ。さすが【制作】Sam Raimi。

冒頭でも書いたが家の中での攻防では、観客全員がオフェンス側もしくはディフェンス側の気持ちで息を止めていた。あの雰囲気ではポップコーンもジュースも無理。携帯マナーモードにしたっけという恐怖感すらあった。

『Don't Breathe』というより『You can’t breathe』

 

【監督】 Fede Álvarez

ウルグアイ出身の映画監督・脚本家。元々YouTubeに短編映画を上げていて、それが映画祭などで話題となりSam RaimiのGhost House Picturesと契約することとなった。

 

最初の仕事はSam Raimiの『The Evil Dead』(死霊のはらわた)のリメイクの脚本と監督、そして作曲まで行うまさに独壇場。

 

『Don't Breathe』では監督、制作、共同脚本、さらにサウンドトラックではヴィオラの演奏もしている。

 

『Don't Breathe』の撮影中にMarvelの『Dr.Strange』の依頼もあったが断っているようです。ガチガチの大作を言われた通り作るより、もっと縛りのない自由な制作がしたいという事のようです。こういう人好き。

 

この映画の後は『The Girl With The Dragon Tattoo』(ドラゴン・タトゥーの女)の続編『The Girl in the Spider's Web』(蜘蛛の巣を払う女)の監督もしている(私はいやな予感がしてまだ見てないです)。

 

2021年の予定には『Don't Breathe2』があり、脚本もできあがっているそうです。楽しみなようなそうでないような。

【制作】 Sam Raimi

言わずとしれた映画監督。Wikiをみるとライミではなくレイミが正しい発音らしい。


『The Evil Dead』(死霊のはらわた) 

 (1981年) 脚本・製作総指揮 兼任
『Crimewave』(XYZマーダーズ)  

(1985年) 脚本 兼任
『Evil Dead 2』(死霊のはらわた2)

 (1987年) 脚本 兼任
『Darkman』(ダークマン)

 (1990年) 原案・脚本 兼任


このあたりまでは面白かったが、メジャーになって『Spiderman』シリーズとか、らしくない映画しかも面白くない映画が多い。最近ではもっぱら制作が多いが『Dr.Strange』の続編は監督をするようだ。

 

【出演】 Jane Levy as Roxanne / "Rocky"

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主人公でやむを得ず強盗の一味となっている。

リメイク版『The Evil Dead』の主役で今回も主役。

 

最近Netflixで見た『I Don't Feel at Home in This World Anymore』(この世に私の居場所なんてない)に出ていたらしいが全く気づかなかった。

 

【出演】 Dylan Minnette as Alex

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主人公のJane Levyに恋心をいだく”あかんたれ”の少年で、ある意味コイツが一番罪が重い。

 

Denis Villeneuveの『Prisoners』(プリズナーズ)で誘拐された娘のお兄さん役も演じている。

 

【出演】 Stephen Lang as Norman Nordstrom / "The Blind Man"

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押し入られる盲目の老人役。怖いというより強い。
実際の本人は写真の通りナイス・ガイで、ブロードウェイでトニー賞にノミネートされるほどの名優です。

 

一番メジャーなのはJames Cameronの『Avatar』(アバター)で最後に主人公と対決する悪役の軍隊長役だろう。この映画も『Avatar』(アバター)も続編への出演が決まっているそうです。

オススメ

とにかく緊迫感を楽しむ映画で夜が舞台なので、電気を消して真っ暗にして見るとより楽しめると思います。

余談

全くお金のかかっていない低予算映画です。お金をかけてもかけなくても面白ければ何でもいいと思うのですが、低予算のヒット作は映像より脚本の良さで評判を得ている事が多いので比較的面白い作品が多い気がします。

 

同じ脚本で日本の映画監督にこんな面白いスリラーが撮れるかなあと考えるとちょっと寂しい気がします。