同じ出版社で被るものを | 無駄話。

無駄話。

鬱病・適応障害持ちが書く与太話です。「下劣な党派心」による「あら探し」が多いので、合わない方はご遠慮願います。

 昨日はすぐに寝付けたようで目が覚めたのは午前6時過ぎ。

 メンタルに行く時に日本橋の丸善で塩野七生の「イタリア異聞」の新潮文庫版と新潮選書の「ハレム」を買った。塩野七生の本を最初に買ったのは「イタリア異聞」の単行本だが「第六話 ハレムのフランス女」のお話は「ハレム」の著者の小笠原弘幸が書いた中公新書の「オスマン帝国」で「これは根拠のない作り話」と撫で切りにされている。同じ出版社から刊行されているのにハレムの記述を読み比べると、どうやら塩野七生が書いたお話のネタ元は「ハレム」で言及されているイタリア人が書いた本のようだ。彼女が「海の都の物語」で礼賛したヴェネツィア共和国の情報収集力は実際のところは大した事がないらしい。ヒュッレム・スルタンをキリスト教圏での通称の「ロッサーナ」と書いている。そもそも塩野七生は「六世紀このかた、トルコのスルタンは、正式の結婚をしてはならないと決められていた。まだトルコ民族が小アジアの流浪の民であった時代」と書いているが「六世紀」にイスラームは存在しないし「トルコ民族が小アジアの流浪の民」などではない。「スルタン」はイスラーム化されてからの称号であり「六世紀」当時なら可汗。一夫一婦制が大前提のキリスト教圏で書かれた興味本位な本のいい加減な情報を受け売りしていたのか?「イタリア異聞」にはヴェネツィアのユダヤ人について書かれているので「海の都の物語」にも書けばいいのに。どちらにしてもアルド・マヌーツィオが聖書を刊行した事を言及していないが。

 メンタルが終わってから教文館で版元の原書房の公式ホームページでは「品切れ・重版未定」の「ダークヒストリー4図説ローマ教皇史」を買い直した。教皇ピウス12世エウジェーニオ・パチェリは「彼は主として秘密裏に行動し、第2次世界大戦中、およそ86万人のユダヤ人の命を救った」とコラムにあるが本文で書かれているのはローマでの目新しくもないお話。そりゃ事実でしょう?同じ版元から刊行されたクノップの「ホロコースト全証言」には彼自身が「非アーリア人、もしくは半アーリア人のカトリック教徒はわれわれと同じく神の子であるが」と書きながら「だが現在の状況では、遺憾ながらわれわれには彼らを効果的に助力することはできない。ただ祈りを捧げるのみである」とある書簡が引用されている。牧者たる教皇聖下御自らカトリックに帰依した「非アーリア人、もしくは半アーリア人」を冷たく見捨てるので聖エーディット・シュタインのような人が出て来るのだが。この本にはカール・ヴォルフがSS大将の肩章をつけてヘッドホンを着けているので戦犯裁判に証人として出廷している時のものらしい写真が掲載されている。白水社のマンシュタイン伝には軍人はニュルンベルクの拘置所に到着して階級章や勲章を外すのを拒むと2日間の食事抜きになったという元第11軍司令官の手紙が引用されているのにマーザーの「ニュルンベルク裁判」にはヴォルフはハンストして勲章をつけたSS大将の制服の着用を認めさせたとあるにしろ変な話。サンライズ作戦でOSSと裏取引でもしたのか、フォン・デム・バッハ-ツェレフスキーのように戦犯裁判にはかけられなかったにしても。