岩波ホール総支配人の高野悦子さん死去 - MSN産経ニュース
東京は神田神保町に在る岩波ホール。ご存じ岩波書店が運営する単館系シネマの魁け。
初めて意識的に映画を観たのは1988年にここで掛かっていた『八月の鯨』だった。俺がまだまだ多感でクソ生意気な、なんちゃってデザイン小僧の頃だ。
当然ミニシアターも初めての体験で、これまで新宿歌舞伎町の猥雑な映画館しか知らなかった俺は、その上品で高級な空間に嬉々とした。こんな言い方は陳腐だけど、ちゃんと作品に触れられる空間な気がしたんだ。完全に背伸びだったが。
この『八月の鯨』はハリウッド黄金期を支えた名女優、リリアン・ギッシュとベティ・デイヴィスの二人が円熟味のある演技で魅せてくれると言う当時の触れ込みだった。しかし俺はその名前もよく知らぬまま、老姉妹とやはり老紳士との慎ましくも美しい日々の営みにただ惹かれていた。
その後もこの映画館ではチェーホフの原作を得た『三人姉妹』や、御大ケン・ローチの『大地と自由』、やはり巨匠アンジェイ・ワイダ『コルチャック先生』、ガブリエル・アクセル『バベットの晩餐会』etc. とお世話になった。
テオ・アンゲロプロスの作品は『霧の中の風景』『こうのとり、たちずさんで』『ユリシーズの瞳』『永遠と一日』など数多い。そもそも彼の代表作『旅芸人の記録』を初めて公開したのも岩波ホールだ。残念ながら『旅芸人の記録』『シテール島への船出』などの初期作品は、後々ビデオで鑑賞したのだが。
韓流ブーム以前の韓国映画『風の丘を越えて』は、旅芸人(パンソリ)の陰惨で壮絶な半生にクラクラしつつとても感動した。思えばあんな底から湧いてくる様な感動はその後も数える程しかない。
最も印象深いのはエミール・クストリッツァ『ジプシーのとき』。この作品はまた違ったタイプのヘヴィさで、尚且つ東欧独特の土臭さの様なものが感じられ、かなりクセが強い。クストリッツァとドュシャン・マカヴェイエフのお陰で、俺の東欧のイメージはヘヴィで土臭くて狂ってる感じ。なおこの作品は音楽も大変優れている。
そして個人的な話だけれどこの映画、何を血迷ったか当時失恋した直後にやるせない気持ちのまま観たのだ。ミスチョイスにも程がある。失意の底にあった俺の心はザクザクと抉られ、途中気分が悪くなる程の容赦の無さだったが、そのインパクトは凄まじく物語終盤の頃にはすっかり虜になっていた。終わってからやっぱり落ち込んだけれど。
俺が足を運ぶ様になる以前は他にもジャン・ルノワール、ルイス・ブニュエル、ルキノ・ヴィスコンティ、フランソワ・トリュフォーなど。アンドレイ・タルコフスキーは『惑星ソラリス』の初公開が掛かったりしていた。そして常に先見的なセレクトをしている同館で最近観られるのは、最早名前も知らない監督の作品ばかりだ。それは俺の勉強不足が一番の原因なのだが。
この度25年ぶりに『八月の鯨』がニュープリントにて上映されるらしい。
『八月の鯨』岩波ホール2013年2月16日(土)よりロードショー
久しぶりに観たいなー観に行っちゃおうかなー。ストーリー忘れてんなー。
映画終わってから「さぼうる」でお茶して神保町散策なんてしたら、きっと素敵な休日になるだろう。
岩波ホール総支配人 高野悦子さんのご冥福をお祈りします。
今回の訃報で初めてそのお名前とご功績を知りました。
東京は神田神保町に在る岩波ホール。ご存じ岩波書店が運営する単館系シネマの魁け。
初めて意識的に映画を観たのは1988年にここで掛かっていた『八月の鯨』だった。俺がまだまだ多感でクソ生意気な、なんちゃってデザイン小僧の頃だ。
当然ミニシアターも初めての体験で、これまで新宿歌舞伎町の猥雑な映画館しか知らなかった俺は、その上品で高級な空間に嬉々とした。こんな言い方は陳腐だけど、ちゃんと作品に触れられる空間な気がしたんだ。完全に背伸びだったが。
この『八月の鯨』はハリウッド黄金期を支えた名女優、リリアン・ギッシュとベティ・デイヴィスの二人が円熟味のある演技で魅せてくれると言う当時の触れ込みだった。しかし俺はその名前もよく知らぬまま、老姉妹とやはり老紳士との慎ましくも美しい日々の営みにただ惹かれていた。
その後もこの映画館ではチェーホフの原作を得た『三人姉妹』や、御大ケン・ローチの『大地と自由』、やはり巨匠アンジェイ・ワイダ『コルチャック先生』、ガブリエル・アクセル『バベットの晩餐会』etc. とお世話になった。
テオ・アンゲロプロスの作品は『霧の中の風景』『こうのとり、たちずさんで』『ユリシーズの瞳』『永遠と一日』など数多い。そもそも彼の代表作『旅芸人の記録』を初めて公開したのも岩波ホールだ。残念ながら『旅芸人の記録』『シテール島への船出』などの初期作品は、後々ビデオで鑑賞したのだが。
韓流ブーム以前の韓国映画『風の丘を越えて』は、旅芸人(パンソリ)の陰惨で壮絶な半生にクラクラしつつとても感動した。思えばあんな底から湧いてくる様な感動はその後も数える程しかない。
最も印象深いのはエミール・クストリッツァ『ジプシーのとき』。この作品はまた違ったタイプのヘヴィさで、尚且つ東欧独特の土臭さの様なものが感じられ、かなりクセが強い。クストリッツァとドュシャン・マカヴェイエフのお陰で、俺の東欧のイメージはヘヴィで土臭くて狂ってる感じ。なおこの作品は音楽も大変優れている。
そして個人的な話だけれどこの映画、何を血迷ったか当時失恋した直後にやるせない気持ちのまま観たのだ。ミスチョイスにも程がある。失意の底にあった俺の心はザクザクと抉られ、途中気分が悪くなる程の容赦の無さだったが、そのインパクトは凄まじく物語終盤の頃にはすっかり虜になっていた。終わってからやっぱり落ち込んだけれど。
俺が足を運ぶ様になる以前は他にもジャン・ルノワール、ルイス・ブニュエル、ルキノ・ヴィスコンティ、フランソワ・トリュフォーなど。アンドレイ・タルコフスキーは『惑星ソラリス』の初公開が掛かったりしていた。そして常に先見的なセレクトをしている同館で最近観られるのは、最早名前も知らない監督の作品ばかりだ。それは俺の勉強不足が一番の原因なのだが。
この度25年ぶりに『八月の鯨』がニュープリントにて上映されるらしい。
『八月の鯨』岩波ホール2013年2月16日(土)よりロードショー
久しぶりに観たいなー観に行っちゃおうかなー。ストーリー忘れてんなー。
映画終わってから「さぼうる」でお茶して神保町散策なんてしたら、きっと素敵な休日になるだろう。
岩波ホール総支配人 高野悦子さんのご冥福をお祈りします。
今回の訃報で初めてそのお名前とご功績を知りました。


