芝居作りについて、ちょいちょい考える日々。
『碧色迷宮』について、ちょっと冷静になった頭で考えてみよう。脚本について。
【脚本】
多分作品としての発想はおもしろかった。まとめてみる。
でも全体的にツメがあまかった。
■オリンピックとプロモーター
荒廃した砂漠と砂煙と海、熱狂的な国民、テレビとラジオ。
インターネットとかは無さそうな時代。
迷宮に命がけの生き残りゲームに挑む7名。
迷宮で一つのゴールを目指すメンバーは、最初は様子見をしながらあるメンバーについていくのだが
次第に仲間割れを起こし、2手に別れる。
太陽の迷宮部屋、水の迷宮部屋。
一旦安堵したかに思われるが、実はそこから一気に細くて暗い道へ・・・。
生き残ることを強烈に意識し始めるメンバーは
『自分を守るため』に攻撃的になっていく。
自分ひとりが何とかゴールへ、勝ち残ろうとする姿は何れも正しい。
そして『自分を守るための攻撃性』は銃という分かりやすい武器を持った段階で
殺戮ゲームに代わっていく。
『モンスター』
迷宮に閉じ込められたことで、プロモーターたちがモンスターになっていく過程。
※
■迷宮
迷宮は、実はTDL(夢の国)の荒廃したいちアトラクションというイメージで。
100年以上までの地球温暖化による大洪水で、半分は水に沈んでいる。
そこに2つの眠れぬ魂が漂っている。
そこに住まう永遠の少女、女王。女王の生んだ子供が閉じ込められている。
子供は『モンスター』と呼ばれているが、実は本舞台で一番無垢な存在。
そしてどのプロモーターの中にくすぶっている攻撃性だったり、寂しさだったり。
鍵を握るのが、圭太という青年。
過ちに気が付いているが、少女と女王に取り付かれて廃墟から抜け出ることが出来ない。
※
■人形
TDLの『its a small world』みたいなもんで。
命を得た人形は、混沌とした世界『迷宮』を回って、
猜疑心や喜びや、誰かを信じたり、憎んだりいろんな感情を得て生き生きと舞台を駆け回っていく。
その過程で、少女の心の痛みをしり、
そして太郎から優しさをうけて、少女に足りないものを知る。
一番生き生きと言葉も表情も輝き出したその瞬間に、命を空に返す。
彼女は、人形。人の形をした入れ物。
だから命を返してしまったら、入れ物に戻る。
※
■太郎
事なかれ主義の太郎は、いつものらりくらりの器用貧乏。
その実、臆病で失敗が怖いがゆえにいつも外撒きに観ている。本心は見せない。
迷宮では否応無しに自体に巻き込まれ、足を踏み入れ、そして一生懸命事態の解決に乗り出すが
かえって裏目にでた結果に愕然とする。
自分の甘さを再認識し、落ち込む彼が「それで大丈夫」と逆に励まされる。
いいのか、いいのかもしれない。
そうやって現実世界に戻る彼の先には、未来への道が伸びる・・・。
※
■なぎさ
究極のプロモーター。
とにかく飢えた感じだ、何かを猛スピードで消費し、食い尽くしていく感じがある。
情報は消費物。彼女にとってモニターにうつるプロモーターはチェス版のコマ。
情報に動かされる、彼女に与えられた情報に動かされるプロモーター。
私達も絶対マスコミに影響を受けている。
判断能力を失ったら最後だ。戦争末期の日本のようになる。
舞台の彼女を照明にいれたら、独裁者のようだった。ナチスみたいに。
私は、手をつないでいたいな。それでも。
銃を持っている人間を前にしたら、逃げるかもしれない。でも一番恐がっているのは、銃を手にしている人間かもしれない。
愛して欲しがっている子供がいて、母親の責任追及をする前に
実は母親も愛して欲しかったのかもしれない。振り上げる右手を止めて、優しく抱きしめてあげる人がいればよかったのかもしれない。
満たされないモノがいっぱい。みんな何かを欲しがっている。
のどが渇いている。
そんな感じを受ける今日この頃。
だから与える優しさを、持ちたいと思う。
そんな脚本でした。
しかしな。
構成と時間配分について、省略できる箇所はあったかもしれない。
確かに興業としてはやや長い。
映画や小説だったら何とかなったかな?
24みたいにカットワリ演出とかすればよかったかもしれない。
人物の過去は一切書かなかったがそれを役者に演じて欲しくて
そこら辺のバックグラウンドを表現する演出的な術を私はもてなかった。
人物のバックグラウンドは、どうしても『説明』になりがちだ。
さくらでも、ゲームでもそうだけど、『バックグラウンド』のシーンは必ずたるむし、
みんな以外と覚えていない。
ただ今回は未来設定だったから、余計バックグラウンドが見えなかったのかもしれない。
でもこの手法でいく。だって演劇だもの。
全体的にこの芝居が面白いかというと、万人ウケはしなかろうと思う。
しかし、前作、前々作よりも長文にわたる感想が来たことも今回が初めてだ。
荒削りだけど、何かは残せたはず。
次は相当しあげていかないとダメだなって思う。
それから大幅に動員が減ってしまったのも痛かった。
主宰よ、ごめんなさい。
迷宮に入る前は、2枚くらいしか扉がなかったものが
迷宮から出た後は5枚くらいの扉が見える。やりたいことが増えた。それはとてつもないもやもやと
充実感と、勉強しなきゃヤバイ!感がある。
ありがと、この機会を与えてくださった全ての人へありがと。
進化します、精進します、期待しててください。結果出しますから。宜しくお願いします。