録画芝居とライブ芝居のギャップが、これほどかと思った訳です。

2005年と2006年、青山劇場で公開された『浪人街』『吉原御免状』のチケットを幸運にも手に入れ見ることができました。それはそれは大変豪華キャスト、贅沢スタッフで話題性もバッチリありました。

【実際見た時】
でもね、どちらが面白かったかというと『浪人街』でした。セットや演出の迫力、登場人物の会話の妙、衣装の美しさ、殺陣の迫力。どれも良かったのですね。対して『吉原御免状』は、シーンの一つ一つはうっとりするほどキレイなんだけど、キレイすぎておとなしく小さく収まってしまっている感否めず。新感線の気迫や荒々しさを感じることが出来なかったのです。

【DVDで見た時】
この2作品DVDを購入し、このほど見ました。連続で。
感想は間逆でした。『浪人街』は変な間や役者のキレのなさがシーンをだらしない物にしていて、ピリっと気持ちが沸くところが無い。シーンとシーンのつながりの希薄さが見ていて集中力を欠かせてしまう。迫力は画面からコチラへは伝わってこない。

対して『吉原御免状』。カメラの背景になっている役者達もリアルに、丁寧にその役を演じていて舞台世界観に綻びが見えない。舞台転換もカメラをとおしてもとにかく自然。堤()の迫力も松雪の艶も画面を通してこぼれる様。

【さてこの差はなんだろう】
カメラが寄れば、細かさが分かる。でも寄らなければ?分からないんだね。しかも青山劇場、役者の表情なんてほとんど見えない。事実『浪人街』は前ブロック中央で、『吉原御免状』は後方ブロックだったんだもん。そういうことなのだ。舞台から観客へ伝わる『役者達自身の迫力』には限界があるのだ。

んじゃ、どうしろっていうんだろう?
どうやって緊張感で小屋を満たすことが出来るんだろうか?


稽古場は小さいからどうしても可視エリアに限界がある。100名程度の小劇場も似たようなもんだ。だからある1役者のムードが、稽古場全体を包むことも可能である。涙もでる。心も震える。
しかしあの大きさの舞台になると、役者→観客への伝播に限界がある。でも観客自身が作り出す緊張感には、限界は無い。ってことは、観客自身が役者を媒介にして、舞台の緊張感を一緒に作り出さなければ、舞台としては成立しないのだと思い立った。バイラルだ。
当劇団は、10回公演にあたって小屋を大きくしました。その際「観客に伝える」ということ、「伝わる」ということに頭を悩ませてしまいました。どこの劇団も通る道なんだろうね。演劇ブロガーで、とある中堅劇団の観劇感想に書いてありました。

小屋を使いこなせるか?使いこなして見せよう、なんといってもまだ私たちは200人収容レベルにも達していないからね。

課題が見つければ、それをつぶせばいい。活路が一個見出せた感じ。


浪人『浪人街』
http://www.wowow.co.jp/extra/rouningai/contents.html
日程:2004年5月16日(日)~6月23日(水)東京・青山劇場
脚本:マキノノゾミ
演出:山田和也
主題曲:坂本龍一
衣装:ワダエミ
出演:唐沢寿明、松たか子、中村獅童、田中美里、成宮寛貴、田山涼成、升毅、鈴木一真、伊原剛志 ほか


『吉原御免状』
http://www.dipps.co.jp/stage/yoshiwara/
日程:2005年9月8日(木) ~ 10月5日(水)
脚色=中島かずき 演出=いのうえひでのり
出演:堤真一/松雪泰子/古田新太/京野ことみ/梶原善/橋本じゅん/高田聖子/粟根まこと/藤村俊二 ほか