あれから2日後の昼。
買い物から帰ると・・・・

親父が、『2日前に文房具屋の小母さんとこに行ったんか?』と私に聞いた。

私:『うん。』

親父:『さっき、文房具屋の小母さんから、「雨が降って足元が悪いんですけど、2日前より30分くらい早く店に来ていただけませんか。お願いします。と、モモンちゃんに伝えてください。」という電話がかかってたさかい、時間が来たら行ったるんやで。』

私:『うん。』

昼飯をすませて・・・袋を縫って・・・時間が過ぎゆき・・・・
3時ごろだったかな・・・文具店の小母さん所へ出掛けました。


文具店に着くと、勉強の一番番長のお兄ちゃんがいました。
勉強の一番番長:『ほな、小母ちゃん頑張ってな。この子みたいに突進せんでええけど、引いたらあかんで。』

私は何のことか分からんかった。
が、文具店の小母さんの窮地を救うための腹積もりであることはわかりました。
私も、その駒の一つであることもわかりました。

私のやることは、文具店の小母さんと、チリチリパーマのおばはんのやり取りを、二人からよく見える場所で性根を据えてシッカリと、その場の一部始終を見届けることでした。

とりあえずチリチリパーマのおばはんがやって来るまで商売の邪魔にならないように店の奥まった場所で丸椅子に腰かけて待っていました。

午後4時を過ぎた・・・が、チリチリパーマのおばはんは、まだ来なかった。


文具店の小母さん:『遅いなぁ・・・。必ず来ると言うてたのにぇ。モモンちゃん、もうちょっと待っててくれる?』

私:『小母さん、私のことやったら気にせんといてね。何時間でも待ってますから。』


4時半くらいに文具店の小母さんが、『お父さんが心配してはるやろうから電話を掛けときますね。』

私:『小母さんお世話かけます。』

文具店の小母さんは、『お世話になってるのは私の方ですのに。』といいながら私の家に電話を掛けてくれました。

文具店の小母さんが小声で親父に説明しているところへ、やってきました。
チリチリパーマのおばはんが。

私は丸椅子から立ち上がって欲しいものを探している振りをしていました。


文具店の小母さんは電話の受話器を置き、『御足労をおかけしてすみません。長いこと借りたままにしててごめんなさいねぇ。お借りしていました≪10万円 + 適正金利≫をやっとお返しすることができました。ホンマに長いこと借りたままにしててごめんなさいね。』

チリチリパーマのおばはん:『≪10万円 + 適正金利≫て、なんや?約束が違うやろ?』

文具店の小母さん:『約束てなんですか? 確かに、5か月前に借りたんは10万円でしたでしょう? だから、10万円と5か月分の適正金利を何とか工面して、こうして用意して、あなたが来はるのをお待ちしてたんですよ。』

チリチリパーマのおばはん:『人を馬鹿にするのんもええ加減にしーや!』

文具店の小母さん『馬鹿になんかしてませんよ。』


チリチリパーマのおばはん:『馬鹿にしてへんのやったら何で借金を全額、耳を揃えて返さへんのや?!』

文具店の小母さん:『だから、こうして、≪10万円 + 適正金利≫を用意してますよ。』

チリチリパーマのおばはん:『あんたの借金は10万円てな端金と違うで。そら初めに貸したんは10万円かもしれへんけど借金には利子というもんがついてくるんやで!』


文具店の小母さん:『はい。だから、こうして適正金利もつけてお返ししますから。受け取ってください。』

チリチリパーマのおばはん:『そんな端金、受け散れるかいな!馬鹿にするのんもええ加減にせー!』

文具店の小母さん:『ほな、私の借金は5か月で、いくらになってるんですか?』

チリチリパーマのおばはん:『あんたの借金はなぁ、〆て320万円や!』


文具店の小母さん:『ひえぇぇぇ!!、何で、5か月ほどで、10万円が、320万円になるんですか?!』

チリチリパーマのおばはん:『あんたも常識のある大人やったら、きちっと覚えときや!借金には利子というものが付くから、借りた時は10万円でも、日にちが過ぎたら320万円になるもんなんや! よう覚えとき!』


文具店の小母さん:『奥さんから、5か月前に10万円を借りたんやけどね、今日、その5か月前に借りてた10万円を返そうとしたら、利子が付いて320万円になってると言われてもねぇ・・・私は10万円を借りた覚えは、ちゃんとあるんやけどねぇ。そやけど320万円てな大金を借りた覚えがありませんねんけど。何で、5か月前に借りた10万円が、借りてから5か月後に320万円になるのか分かりませんねん。』


文具店の小母さんと、チリチリパーマのおばはんは、このやり取りを
延々、約30分近くやっておりました。
文具店の小母さんが私に目で合図をしたので、私は、チリチリパーマのおばはんの側をウロウロしていました。


文具店の小母さん:『ああ、あのーぉ、モモンちゃん。一寸、話を一緒に聞いてくれる?』

私:『うん。ええよ。なに?どうしたん?小母さん。』

文具店の小母さん:『あのぉ、奥さん(チリチリパーマのおばはん)、すみませんけど、もう一回、5か月前に借りた10万円が、どうして、借りてから5か月目に320万円に増えたのか説明してもらえませんやろか?』


チリチリパーマのおばはん『あんたなぁ!何回、同じことを言いわせたら気がすむんや?!』

文具店の小母さん:『すみません。もう一回だけお願いします。もう一回だけお願いします。』

チリチリパーマのおばはん:『あと1回だけやで。』

文具店の小母さん:『はい!よろしくお願いします。モモンちゃんも、よく聞いとってな。』

私:『はい。・・あ・・・、ちょっと待って・・・、(文具店の)小母さん、紙と鉛筆が欲しいから勘定してください。』

文具店の小母さん:『書くものやったら、ここにあるから使うてください。』

チリチリパーマのおばはん:『あんた頭の悪い子やなぁ、書かんと分からんのんかいな?』


私:『そうですねん。私は書かんと分からへんのです。ごめんねぇ。』


文具店の小母さん:『ええっと、5か月前に10万円借りて・・・』


私:『5か月前に、(文具店の)小母さんが、この人(チリチリパーマのおばはん)から、10万円を借りて・・・』と文具店に常設していたメモに書きました。

私:『ほんで・・・その次に借りた、お金が、なんぼなんですか?』


チリチリパーマのおばはん:『320万円や!』

私:『ええーーー!!!(文具店の)小母さん、5か月の間に、320万円もお金を借りたん?』


文具店の小母さん:『いいえぇ。私が、この人(チリチリパーマのおばはん)から借りたのは10万円だけなんよ。』

私:『それやったら何で、5か月の間に、10万円が ⇒ 320万円に増えたん?』

チリチリパーマのおばはん:『利子が付いたからや!利子が付いたから320万円になったんや!あんたらは二人もそろうて無茶苦茶、頭が悪いな!計算もまともにできへんのんかいな?!』


私:『すんません。(文具店の)小母さん、書いて計算しよ。』


文具店の小母さん:『そうやね・・・ほんまやわ。書いて計算したらよかったんやねぇ。すんませんねぇ。奥さん(チリチリパーマのおばはん)、もう一回、初めから、すみません。』


チリチリパーマのおばはんは相当にイライラしておりました。
文具店に来てから1時間近く同じ話を繰り返しておりましたので。


私:『えーっと、小母さんが、5か月前に、10万円借りて・・・・それから5か月たって・・・10万円が、320万円に増えたんやね。小母さん、式を作ろ。』

文具店の小母さん:『そうやねぇ。どういう風にしたらええんやろね・・・』


チリチリパーマのおばはん:『何でもええから早してくれへんか?!私も忙しいんや。あんたらと遊んでる暇なんかないんやからなぁ!』


私:『すんません。えーっと、ほな、とりあえず、320万円から10万円を引いたら、いくら残るんやろ?文具店の小母さんが、おんまに、10万円しか借りてないねんやったら、残りが5か月の間に、借りた10万円に付いた利子と言うことやろ?』


文具店の小母さん:『そうやねぇ。一緒に計算してみましょか・・・≪320万円 - 10万円 = 310万円≫やねぇ。』


私:『え゛え゛ーーー!!! 銀行で10万円借りたら、たった5か月の間に310万円も利子が付くのん? へぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!』

チリチリパーマのおばはん:『な、、何を言うてるのや、この子は?』

私:『(??)銀行でも、何処でも、誰かに、10万円の借金をしたら、5か月経っと、310万円の利子が付いて≪320万円≫になるんでしょう?』

チリチリパーマのおばはんは・・・焦りはじめた・・・・


文具店の小母さんは声を改めて、
『奥さん(チリチリパーマのおばはん)、10万円の借金に対して、5か月で310万円の利子というのは違法金利と違うんですか?』


チリチリパーマのおばはんは、さっきまでの勢いが消えてシドロモドロになりました。

文具店の小母さん:『もう一度、言いますね。10万円の借金に対して、5か月で310万円の利子というのは違法金利と違うんですか?』


チリチリパーマのおばはん:『・・・・きょ…今日のところは見逃したるさかい、次は320万円、キッチリ耳を揃えて用意してから電話するんやで!』と言うなり走って店から出て行きました。

私:『赤鬼のおばはん、帰ってしもうたね。』
(チリチリパーマのおばはんのことです。髪を赤く染めてチリチリにパーマをかけて頭に角を付けたら鬼ヶ島に出てきそうな赤鬼の様相を呈しておりましたもので。)

文具店の小母さん:『帰ったんと違う。逃げよったんや。私が言いなりになって320万円を出すと本気で思うてるんかいな。阿保かいな!』普段は上品で穏やかな小母さんが怒っておりました。

文具店の小母さんは何処かへ電話を掛けて、
『○○文具店です。今、帰りました。』と言っていました。
その後は『はい』『はい』と返事をしているだけでした。


文具店の小母さんが電話の受話器を置くと・・・・親父が母を連れて店に来た。

親父:『ちいと離れて店の中の様子を見させてもらうてたんやけど、何や、ややこしい事になってるみたいやなぁ。』

文具店の小母さん:『はい。そのことで、もうしばらくモモンちゃんをお借りできますか?』

親父:『へえ。へえ。これで役に立つのでしたら、どうぞ使うたってください。』

文具店の小母さん:『ありがとうございます。』

親父:『モモン。ほな家に帰ってるさかい。シッカリ助けたるんやで。』


私:『うん。』

親父と母は家へ帰り。

文具店の小母さんが、『モモンちゃん、お茶を入れるさかい、ゆっくりしとってな。』

私:『小母さん、ありがとう。』