2年半振りにタクシー乗務員に復職した。

少し緊張しながら街を流す。

女性を同伴した50代位の男性が手を挙げる。

ご乗車いただく。

聞く気がなくてもお客様の会話は自然に耳に入ってくる。



ポケモンGOというのはウォーキングソフトなんだよ。

男性が言う。

日頃から、家に引きこもり、

運動不足になりがちな人が、

ポケモンGOに参加することで

アチラコチラ動きまわり、

運動不足を解消する。

最高のウォーキングソフトだ。



ポケモンGOはやったことがない。

そもそも、わたしの携帯はガラケーで

ゲームなど出来はしない。

ポケモンGOというソフトが巷で流行していることは知っていた。

どんなものかよくわからない。




なるほど、ポケモンGOはウォーキングソフトだったのか。

ちょっと興味が湧く。

やってみたいと思ったが、

ガラケーでは出来ないらしい。

諦める。



しばらく流す。

那覇の久茂地川沿いの道で

1歳ほどの赤ん坊を抱いた、

茶髪の30くらいの男性が手を上げた。



運転手さん、川沿いを走り、

美栄橋駅から右に折れてジュンク堂書店の方に曲がってください。

それからあとは指示します。

そういう。



ジュンク堂の裏にカラオケ店があるからそっちに向かって。

信号待ちで止まっていると

彼が叫ぶ。

あ、逃げられた。

運転手さん、パラダイス通りに向かって。

パラダイス通りにはいったところ

カフェの前辺りで止まる。



しばらくそこで待機。

一体何をやっているんだろう。

???が浮かぶ。



一体何をしてるんですか?

私は聴いた。

ポケモンGOですよ。

いまこの場所で、

ポケモンを一匹捕まえました。



今度はこのまままっすぐ、国際通りにでてください。

それから、一銀通りに入ってください。

58号線向けに移動して。



そして、元の場所近くで彼らは降り、

料金は560円であった。



普通の世界の中で、

バーチャル・ワールドを初めて目撃した。

瞬間だった。