W杯の敗戦で感じたこと | Der Traum endet nicht ~留学王におれはなる!!~

W杯の敗戦で感じたこと

2014年日本代表のブラジルワールドカップ(W杯)は1分2敗のグループ最下位で終了。

まさに8年前のリプレイを見ている様だった。

結果だけではない。内容、代表を取り巻く環境全てがだ。

2006年、海外組も増え、ワールドユース(現U20W杯)準優勝組が円熟期を迎えた。中田英寿(ボルトン)、中村俊輔(セルティック)、稲本潤一(ウエスト・ブロムウィッチ)、小野伸二(浦和)は黄金の中盤と呼ばれ、エースFW高原直泰(ハンブルガーSV)は開催国ドイツで3シーズン半を過ごしていた。その時点で過去最高と言えるメンバーだった。W杯前の親善試合では、強豪ドイツ代表相手に敵地で2-0から追いつかれたものの高原の2ゴールで引き分け、準備は万全かと思われた。しかし、蓋を開けてみると今回同様の1分2敗。

初戦オーストラリアに先制するも、後半暑さで足が止まり3失点で逆転負けを喫する。2戦目はクロアチア相手に中田のミドルシュートがGKのスーパーセーブ阻まれ、柳沢敦(鹿島)が決定的場面で信じられないようなミスを犯し得点が奪えないままスコアレスドロー。絶体絶命で迎えた最終戦は既にグループ突破を決めていたブラジル。王者相手に玉田圭司(名古屋)が先制点を上げるも、その後ブラジルが格の違いを見せつけ、最後はGKを交代させる屈辱的な敗戦。

今回も香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)をはじめ、本田圭佑(ACミラン)、長友佑都(インテル)など世界の中でもビッグクラブと言われるクラブの選手達が名を連ね、岡崎慎司(マインツ)はFWとして日本人海外最多得点を更新。直前の親善試合では、実力が劣る相手にビハインドを許すものの攻撃陣が爆発し逆転勝ちを収め、課題はあったもののいい形でブラジルへ乗り込んだ。

ところが、だ。初戦コートジボワール戦では本田のゴールで先制するも、後半足が止まり逆転負け。続くギリシャ戦でも大久保嘉人(川崎)のミドルはGKのスーパーセーブ、同様に決定的なチャンスを外し、1人少ない相手にゴールをこじ開けられずスコアレスドロー。勝利が絶体条件の最終戦はやはりグループ突破を決めていた強豪コロンビア。結果は一時追いつくものの1-4でGK交代とまさにブラジル戦と同じ結果となった。

こじつけかもしれないが、試合経過だけでもこれだけ酷似している。

もちろんこじつけだけではない。
キャンプ地選びでは、ドイツでのボンも環境は劣悪だったと聞く。ブラジルに関してもなぜ試合の無いサンパウロ、さらに直前まで完成していない施設を選択したのか?ブラジルの国土は広く、地域によって寒暖の差が激しい。コロンビアと戦ったクイアバを除いては両方海沿いの北東に位置している。サンパウロからは飛行機で約3時間ほどかかり、気温も気候も異なっている。

メンバーにしても2006年は中心だった中田がグロインペインとコンディションの問題でシーズン中は思う様に活躍出来ていない。10番で司令塔の中村もW杯期間に入り調子を落としてしまった。小野もオランダから浦和に復帰したもののチームとは逆に思う様にプレー出来ていなかった。

今回も10番である香川がシーズンを満足に過ごせず、その状態のままW杯に臨んでいる。また、柿谷曜一朗(C大阪)に至っては昨シーズンの活躍のみで今シーズンは1得点と明らかに調子を落としていた。さらに、内田篤人(シャルケ)、吉田麻也(サウサンプトン)、長谷部誠(ニュルンベルク)に関しても怪我による長期離脱から復帰したばかり。

そして、両大会共に本大会で思い切って起用できるほどリザーブの選手を試していない。今回に限って起用していない選手は何人いただろうか?

チームだけではない。マスコミも柿谷、本田、香川とサッカーとは関係ない面でまるでアイドルのように騒ぎ立てていた。

所属クラブにしても、選手を守る意識が足りていない。もちろんマスコミ対応はプロとして義務である。しかしW杯予選で活躍した前田遼一(磐田)などは関係ない部分で潰されたと言っていいだろう。クラブがデスゴール騒動を沈静化出来ていれば前田はまだ代表だったかもしれない。

たらればを言ってもきりがないし、戦犯を探すつもりもない。そしてもちろんW杯である。プロが出来て20年弱の国がそう簡単に勝てる様な甘い大会では無い。相手も死に物狂いであらゆる手を使って勝ちに来る。ビッグクラブ所属選手がいるからといって勝てるわけでもない。前回王者のスペイン、2006王者のイタリア、サッカーの母国イングランドですらグループリーグで姿を消している。ヨーロッパの超一流と言われる選手を抱える国でさえも勝ち残ることが困難なのは確かだ。

選手選考も実際柿谷のポテンシャル、香川の復調の可能性も0ではなかった。現にコンディションの心配されていた本田は見事に本戦に合わせてコンディションを調整し、同じく怪我で心配された内田、長谷部は今大会目を見張るパフォーマンスを見せた。さらにJリーグで結果を残していた大久保はギリギリ招集。そして、W杯以外ではアジア王者になるなどのそれなりの成果は残してきていた。

実際のところ、現状の日本代表の実力はまだこのレベルと言うことだ。

8年前と酷似している点が多いと散々述べたが選手個々に関しては確実にレベルが上がっていると言えるだろう。しかし、周りがそれに追いついていないということを感じた大会だった。先に述べたキャンプ候補地にしてもスポンサーへの配慮優先で選手たちへのコンディションなどは度外視。選手たちは優勝を狙っていたが協会の目標はどこだったのか?グループ突破か?ベスト4か?それに見合った監督を連れてきたのか?ザッケローニにもう文句を言うつもりはない。セリエAでは現に結果を出してきた監督だ。しかし、代表とクラブはやはり違う。大一番で采配ミス、戦術の迷走などやってはいけない場面でやってしまった。

結局のところ、選手だけでなく協会も含めたすべてがレベルを上げていかなければ世界と戦うにはまだ足りないということだろう。
監督人事にしてもW杯で優勝、グループリーグ突破を目指すならば日本を知り、さらにW杯を経験している監督と言うように明確なビジョンを考えるべきだと思う。4年後のロシア開催は既に決定事項であり、スカウティングの時間は十分にある。しかし、すでに4年後の主力などと言う話が出ている。正直なところまだ気が早い。4年後を目指す前にまずは、もう一度アジア王者になることだ。アジア王者の座も盤石ではない。ましてやクラブ単位ではここ数年アジアで成果を残せていない。1月に行われるアジアカップはシーズン真っ只中の海外組抜きで戦えるような国内選手のレベルアップが必要。そのためにもJリーグを盛り上げていく必要ある。それにはやはりサポーター、メディアの力が必要になってくる。


興業や金儲けではなく日本サッカーを強くするためにまずはゆっくりでいいからそういうところから見つめなおさなくてはいけないのではないだろうか。