こんなにも胸を刺す景色は滅多にない。



この遺跡が山の斜面に沿って建っている、その景観が美しいとか、そういう単純な問題ではない。



この遺跡が胸を刺して、

それはつまり高揚感であり、切なさなんだけど、

そういう気持ちにさせるのは、ここがかつて繁栄しいつしか捨てられた場所で、その面影を程よく残してるからに他ならない。




この感覚は、お城で絢爛豪華に飾られた広間ではなく台所に足を踏み入れた時の感覚と同じで、



ここに暮らしていた人達がいて、


なのに今はここは廃墟で、遺跡で、


その営みはいつしか途絶えて、


その痕跡は確かに残っている、



その光景に想いを馳せて、感じている人がここにいるんだよ、と語りかけずにはいられなくなる、そういう感覚。




いつか忘れ去られて、それでもずっとここに在って、人がいた時の名残を残して。








ね、今は忘れてないよ。