1.7(1)セカンド・ステージチェック

 

<セカンド・ステージチェック>

当面の目標は、単独飛行で2種類の野外飛行へ出ることです。一つは片道1時間弱の1往復で「ショート・クロカン」なんて呼んでいました。もう一つは、3地点間を飛ぶ総距離も長い野外飛行で「ロング・クロカン」って呼んでいました。

 

これらの野外飛行において単独飛行を行うためには、セカンド・ステージチェックに合格しなければなりませんでした。今度は、離着陸の他に、VORを用いた飛行なども審査の対象です。

 

思えば、ファースト・ソロとして拠点空港の場周経路を飛ぶためのファースト・ステージチェックはメンタルも弱くてみじめな結果でした。今度はVORを使った飛行が今一つ習得できていなかったので、そこを不安に思っていました。しかし、あれから沢山の飛行経験を積み、自分を理解して「負のベール」を脱ぎ捨て(1.4 (5) 「負のベール」を脱ぎ捨てること | 自家用操縦士訓練物語~超怖がりな私が空を飛んだ日(My PPL Training Days) (ameblo.jp))、泣いたり笑ったりメンタルも(少しは)強くなり、何より今度の審査にはエアワークがなかった(ヤッホー!)からかもしれませんが、前回とは違ってセカンド・ステージチェックにはすんなりと合格してしまいました。

 

<緊急事態(Emergency)に対するプランニング>

セカンド・ステージチェックに合格した日、単独飛行で初の野外飛行(Solo Short Cross-Country Flight)に出る日が3日後に決まりました。これは距離の短い1往復のルートなので、当日の朝のお天気チェックとNAV LOGをきちんと作り、最終的な復習をすれば恐らく大丈夫だろうと思えました。

 

自家用操縦士免許のための訓練はエンジンが一基しかない飛行機で行われるため、エンジンが止まるとどこかに不時着することを余儀なくされる可能性が非常に大きいのです。ですから、単独飛行による野外飛行を前に、最近の座学では緊急事態のプランニングなども話題に上るようになりました。

 

例えば、離陸直後にエンジンに不具合が起こった場合、どれくらいの高度を超えたら方向を変えて滑走路に戻るべきかとか、それ以下ならそのまま降りられるところを探しておく等です。もちろん、野外飛行の経路上の全ての場所で、エンジンに不具合が起こったらどこに緊急着陸するかのプランニングもしていました。一部、どうしても予定の高度から最大滑空距離(Maximum Glide Distance)内に空港がない区間がありましたが、そこは平地を探しておくしかないのかなという感じです。

PHAK日英対訳ノートより

 

ある日、場周経路(Traffic Pattern)を飛んでいた時、ダウンウィンド・レグ(Downwind Leg)のアビーム(Abeam)(滑走路と平行に走るダウンウィンドの中で、滑走路番号を真横に見る地点)近くで、突然教官に「はい、Engine Failure(エンジンの不具合)、どうしますか?」と言われパワーをアイドルにされてしまいました。「ハァー?」と思いながらも、「そのまま降りるしかないです・・・」という感じの私。

 

「Runwayまで届くと思いますか」なんて聞かれながら、対処法を教えてもらいました。ダウンウィンドからベースに旋回するところでエンジンがアイドルのまま着陸するのは初めての経験でした。感覚的には、自分の体重が軽くなって蝶々がヒラヒラと舞い降りる感じでした。その時、教官から「どんなことがあっても、サバイブして(生き残って)ください」と言われた言葉が心に深く響きました。「一人で長い時間飛ぶんだから、何かが起こっても自分で生き残らなくちゃならないんだ。」「教官たちは、訓練生が一人で安全に飛べるように、日々、心を砕いていてくれているんだ。」ということが伝わってきました。

 

離陸滑走中に「はい、Engine Failure、どうする?」と言われてパワーをアイドルにされたこともありました。前日の座学で対処法を習っていたので、咄嗟に「あの通りにしよう」と思ってやってみました。机上で習ったことを機上で実践するとき、頭と体がつながっている、つまり、「思った通りにできている」のですごくワクワクしましました。

 

<試験が迫ってきた>

試験も3週間後に決まり、拠点空港とは別の空港で行うことになりました。試験に備えて、試験官の特徴を考慮した指導も増え、離着陸は直前にその種類がオーダーされても、即座に対処できるように練習していました。到着時、場周経路に入るときの正確な高度維持やVORの復習など、細かい点が直されて試験の合格基準を意識した指導もしていただきました。

 

実地試験(Checkride)には、飛行試験(Flight Portion)のみならず口述試験(Oral Portion)もあるので、同じ時期に試験を受ける仲間たちはもっと前から口頭試験の勉強を始めていて、わざわざ学校の白板に書いてアピールしている人もいました。私は口述試験より飛行試験の方が不得意なので、敢えて焦らないように意識して、あと数日したら始めることに決めていました。この判断が吉と出るか凶と出るか…(続く)