1.4(2)TSA指紋登録

 

前回、ファーストフライトが渡米から2週間後だった話をしました。TSA指紋登録が済めば、セカンドフライト後の飛行訓練が開始できます。

 

通常、指紋登録は2~3日で完了するのですが、何日経っても連絡がありません。何度も問い合わせもしたのですが、遅れている理由もわかりませんでした。仕方なく、フライトができないので座学ばかり進めていました。同じ時期に来ていた他の訓練生は、どんどん訓練が進んでいます。

 

座学を進めるといっても、訓練効率を上げるために、本来、飛行訓練のメニューにタイミングを合わせて座学のシラバスが組まれているので、もうこれ以上座学を進めても私のためにならないという学校側の判断もあり、最後は、毎日学校に通って自習しているような毎日になりました。

 

米国行きの便の待合室でこけて、米国に到着したら学校は消えてるし、何とか頑張って転校もできたけど、今度は指紋の登録で時間が掛っている。これは一体何なんだろうと思いました。

 

学校の入っているFBOのビルはランプに面していました。ランプに駐機中の飛行機や、正面の滑走路や斜め後ろから交差する滑走路から離陸する飛行機が見えました。一人でランプに出ることができる許可証がなかったので、毎日、無線機を借りてタワー管制のATCを聴きながら、空港域の飛行機を窓からボーっと見ていました。

 

その時に、私は機械に弱いので、航空機の諸系統(Aircraft Systems)について教科書の絵や図を模写すると良いとアドバイスを受けて、毎日、絵を描いていました。確かにそれは私の理解度を上げることにつながっていき、口述試験では絵を描いて説明することもできたので、その時にも役立ちました。

 

たった一回録音できたファーストフライトのATCを聴いて、聞いた内容を書取る練習を何度もしていました。

 

ATCの克服は、今回、自家用操縦士免許を取ろうと思ったときに立てた3つの目標の一つでした。

1つ目は、どんな時も冷静でいること(私はすぐにあたふたするし、繊細で心折れやすいので、それを克服したかった)。

2つ目は、マルチタスクができる人になる(一つのことに集中する方が楽なので、いつでも意識を分散させて咄嗟のことに備えられる人になりたかった)。

3つ目は英語でATCをちゃんと一人でできるようになること(ATCをスラスラ言えたらカッコいいし、不得意なリスニングとスピーキングを上手くなりたかった)。

でした。

 

「好きな分野でなら、苦手なことにも挑戦できるでしょう」ってことで。

 

目標が達成されたかどうかは、この物語の最終回にわかると思いますが、その3番目のATCの理解を急いだので、最初の頃は、時間的効率が悪いのは承知の上で、毎日、フライト後に書き取り(Transcription)をしていました。書き取るだけでなく、分からないところは教官に聞いて埋めていき、そのやり取りの背景を教えてもらいました。それが、後のフライトでいくつも出てきたので、最終的に効率的だったのか非効率的だったのかはわかりませんが、それが、後のフライトで初めて聞くATCの文言に即座に対応することができたりもしましたので、何事も無駄な経験はないのかもしれません。ただ、自分がそうしたいからそうしていました。短所としては、その分、イメトレ(イメージトレーニング)がおろそかになったかもしれません。なので、ATCの書取りをやめた後は、イメトレの時間を多くしました。

 

果たして、晴れてセカンドフライトができるはいつなのか。(続く)