0.5 氷点下の雲の中で氷にならない水ってあるの?

 

自家用操縦士(PPL)訓練では、どの科目も深く掘り下げることはなく、あくまでも操縦するため、飛行するための範囲で知識を身に付けます。でも、後からあらためて勉強していくと、深堀したくなることもあります。

 

その一つが、先日投稿した「1.2(7)気象(Weather)」の中で書いた、0℃を下回る環境で液体のままでいる水分「過冷却水滴(Supercooled Droplets of Water)」です。「空(くー)ちゃんは、雲の中では0℃でも氷にならずに水のままでいることができる」と書きました。1.2 (7) 気象(Weather) | 自家用操縦士訓練物語~超怖がりな私が空を飛んだ日(My PPL Training Days) (ameblo.jp)

 

どうしても、なぜ?って考えてしまいます。その答えが私の好きな本(難しくて理解できない部分も多い)の一つを読み返していたときに見つかったのでご紹介します。

 

気象庁の研究機関の研究官で「雲愛」がすごい荒木健太郎さんの「雲の中では何が起こっているのか」という本です。お天気通の方でも楽しめる本ではないかと思っています。

 

それによると、一般的に「水は0℃で凍る」というイメージがありますが、これはそもそも水が何かの物体(製氷皿など)に接していることが前提になっている。でも、雲の中では水滴は何にも触れていないため、水滴は0℃でもなかなか氷にならずにマイナス20℃くらいまでは液体のままでいることができるということです。そして、この状態が「過冷却(Supercooled)」です。

 

この過冷却水滴に飛行機が衝突すると、瞬時に着氷(Structural Icing)となり、これは飛行の危険要因の一つです。着氷時の気温、水滴の大きさ、雲の種類(積雲性なのか層雲性なのか)によって、Clear Ice(雨氷型)、Rime Ice(樹氷型)、Mixed Icing(混合型)の3種類に分けて学びます。米国立気象局(National Weather Service)のサイトに写真が載っています。

Icing Hazards (weather.gov)

 

大雑把な説明をすると:

Clear Ice(雨氷型):2℃~-10℃、固い、滑らかな表面、透明、光沢←これ結構怖い

Rime Ice(樹氷型):-10℃~-15℃、脆い、白色、ごつごつした表面

Mixed Ice(混合型):上記2つの混合型

 

次回、投稿予定の「1.2(8)気象サービス」でも学びますが、パイロットが飛行中に着氷に遭遇したとき、ATCを通じて「Pilot Report(PIREP)(パイレップ)」として報告する際、着氷の種類をこの3つの分類を用いて行います。

 

着氷(Icing)をわざわざ「Structural Icing」というのは、飛行機の勉強の中では、もう一つ初期訓練機に装備されていることが多い気化器の凍結(Carburetor Icing)(「1.2(3)航空機の諸系統(Aircraft Systems)」:1.2 (3)  航空機の諸系統(Aircraft Systems) | 自家用操縦士訓練物語~超怖がりな私が空を飛んだ日(My PPL Training Days) (ameblo.jp))があるからです。なので、Structural Icingとは、ピトー管、翼上面、翼前縁を含む機体表面の着氷のことです。

 

着氷(Structural Icing)については、自家用操縦士の試験では軽く扱い、計器飛行証明の試験で筆記試験でも口述試験でも重点的に扱われていように思います。雲の中も飛行することが前提ですからね!

 

今日は短い投稿ですが、ここまでにします。