前回に引き続き、
今回は指紋付着防止性についての評価方法に
ついての説明です。
指紋付着防止機能に必要なもう一つの要素は耐久性です。
弊社製品の耐久性についてよくお問い合せをいただきます。
実は、耐久性という言葉はひとくくりで大ざっぱな言葉なんです。
実際には 耐摩耗性、耐候性、耐油性、耐水性、耐熱性などなど、
ご使用になる用途・環境やご要求の性能が何か? によって
耐久性という言葉は様々な意味を持ちます。
指紋付着防止性用途の場合は、耐摩耗性が最も重要な要素となります。
実際の評価方法としては、下の写真のような摩擦試験機で評価対象の表面を
摩擦子で摩擦して、摩擦前後の接触角を計測します。
測定試料を水平にセットした状態で測定ステージが水平に動きます。
摩擦する部分(摩擦子)は下の写真のような状態です。 この写真では摩擦素材として
ティッシュペーパーをセットしてあります。
また、摩擦時には下のような錘を乗せて荷重します。
錘はいろいろ選択できますが1㎏が標準的です。
摩擦耐久テストにおいても、水の接触角では
正しい評価は得られません。
しつこいようですが、正しい防汚性能評価方法は
油の滑落角です。
(前回、前々回の記事をご参照ください)
前回の記事にも記載しましたとおり、測定する油の種類としては
ノルマルヘキサデカン、オレイン酸、トリオレイン の3種類のうちいずれかが
指紋成分に近くおススメとなります。
また、摩擦子に摩擦する素材をセットして摩擦を与えるのですが、この素材の
選択も重要です。
良くスチールウール#0000 という摩擦素材の指定をいただきます。
しかし、じつはこの選択もあまりよろしくはありません。
理由は以下の3点です。
1.コーティング成分の下地となる基材までも削れてしまうことがあり。
コーティング膜自体の耐摩耗性評価とは言い難い。
2.摩擦する面の平面度にばらつきが出やすく、セット方法によって摩擦状況
が安定しない。
(摩擦する面にでっぱりやヒゲがあると、特定の部分だけが削られてしまう)
3.削られたコーティング成分がスチールウールにいったん付着した後、摩擦表面に
再付着する可能性がある。
弊社では摩擦素材としては、実際のユーザーが使用されることを想定して
テイッシュペーパーを使用しております。
また、上記3の再付着の懸念より1000サイクル摩擦ごとに新しいティッシュ
ペーパーに交換します。
実際に弊社で測定したデータを下記に示します。
このデータは
「フロロサーフ FG-5083を 複数回塗布した場合にどのような効果が得られるか? 」
というテーマで摩擦試験を行った結果です。
縦軸がヘキサデカンの滑落角、横軸が摩擦回数です。
このグラフより 「2回重ね塗りすると指紋付着防止効果の耐久性が最も高い」
という結果が得られました。
この実験内容と考察につきましては、次回ご説明いたします。