大学と云う所は、あまり学生に干渉しない所だと聞いていたので、ルンルンの思いで入学したのですが、初日のガイダンスの日に、下駄で出掛けて行ったら、大学のビルの中をカラコロ歩く私を見ていたのでしょう、先生からいきなり下駄で来る奴が居る、とんでもないと。
私は戦後何も無い時代、小学校は当然下駄。中学は1年生から応援団になり、これも当然下駄、高校も応援団でこれまた下駄、つまりず~っと下駄だったのです。
下駄でしかられたのは初めてでびっくりしました。
先生は戦争中海軍技術士官で戦争が終わり大学へ戻って来られた方でしたがマメタンクと云うニックネームで大変パワフルな方でした。
曰く、下駄がいかんと云う学則は無いが、と先手を打って来られ、常識だと。そんな常識は先に書いたような次第で、私には全く無く、びっくりしていた所、ここは機械工学科で機械の実習も有る、万一滑ったりしたら大変なことになる、絶対いかんと。
私も万一は困るので、帰って早速まだ上京して来たばかりの東京で、靴屋がどこに有るやら、どんなのを買って良いやら分からないまま、三越デパートへ飛び込んで、始めての靴を買って来ました。
靴が足になじむまでは歩きにくく、きゅうくつで、下駄よりずっと危険だと思いましたが、いけないと云うので、2日目からその皮の靴で通うことになりました。
大抵のことは、しかられることはある程度予期されるものでしたが、下駄だけは思いもよらないおしかりでした。
下駄は私には常識でした。