飼育するスケールはものすごく大きく、餌も残飯では無く横浜の協同飼料から毎日トラックで、袋詰の配合飼料が輸送されて来ていました。でも餌は大勢の牧場の人達が袋を開け、担いで、豚房の餌箱へ“適切”に入れて廻っていました。

 豚達は良く食べますし、どんどん食べさせないと大きくならず商品になりません。それは大変な作業でした。

 これをほっといても自動給餌するのです、しかも世界初、技術屋にとって少々厄介でも楽しい話でもありました。

 装置が完成すれば、配合飼料は紙袋も要らなくなり、タンクローリーで運ばれて来て、新設する専用サイロに自動で送り込まれ、豚の成長に合わせた配合でミキサーが動き“流動食”にし、子豚用、親豚用にそれぞれのメニューでパイプを通しておびただしい数の餌箱へ全自動供給されるのです。

 これらの演算は、真空管式の電子頭脳で、市販など無く 専用に作られました。

 今で云うコンピューターですが、マイコン程の機能もないものでしたが、それは目を見張るすばらしいものでした。

 ミキサーももとより、それ用の市販機は無く、自分で最も効率良く撹拌される撹拌羽根の形状を実験で決め、混相流体としての抵抗値を求めた上で動力を算出し、設計しました。

 このミキサーはトラックスケールを利用し、飼料の供給、水の供給、そして豚房毎への輸送量を計測するようにし、餌の輸送ラインも延べ2000m余におよぶものでした。

 いよいよ試運転。かつて人気を呼んだ地下鉄万歳ではありませんが、何か有っては困るので、朝早くから起きて、自動で動き出すのを待ちました。大小を問わず試運転のときは緊張感を伴うものですが、このときの感覚は今も忘れられません。何分にも生きている1万頭の動物へ直接与えるものゆえ、ちょこちょこテストを試みることは出来ません、勝手に豚が食べちゃ困るんです。完成、点検 試運転即本運転です。

 もちろん“世界初”には細かなトラブルや調整も必要でしたが、めでたく完了。

次回へ。


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装置の一部(窓からうっすら見える部分が私の開発(?)、設計した計量ミキサーです)と餌のタンク。