MR.BIG 「LEAN INTO IT」(1991) | ギャルメタラーの日々

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書庫があるのにぜんぜんアルバムレビューがないので、そろそろこれ書きます。

ご存知MR.BIGの2ndアルバム。そして最高傑作といってもいいでしょう。

MR.BIGは凄腕のビリー・シーンとポール・ギルバートが中心になっている、という認識がデビュー当時は一般的だったこともあって、ビリーとポールのすさまじいプレイが控えめに押し出されていました。
さらに、バンド名からもわかるようにブルーズロックバンドを目指したものでした。

しかし本作は、ヴォーカルを全面に押し出し、楽器隊のスーパープレイよりも曲重視のスタイルにシフトしました。それに伴いビリーとポールのプレイも前作以上に曲メインに徹した感じがします。
とはいえ、それはあくまで「彼らにしては」というだけのことで、やはり常人のものではありません。
前作はかなりシンプルな音作りでしたが、本作はよりメジャー感のある音になっています。ブルーズロックというよりはより普遍的なアメリカンロックという感じになりましたが、これが大成功につながったのです。


1. Daddy, Brother, Lover, Little Boy (3:55) 作詞:GILBERT PAUL BRANDON/MARTIN ERIC LEE/PESSIS ANDRE/SHEEHAN WILLIAM/TORPEY PAT 作曲:GILBERT PAUL BRANDON/MARTIN ERIC LEE/PESSIS ANDRE/SHEEHAN WILLIAM/TORPEY PAT
2. Alive And Kickin' (5:49) 作詞:GILBERT PAUL BRANDON/MARTIN ERIC LEE/PESSIS ANDRE/SHEEHAN WILLIAM/TORPEY PAT 作曲:GILBERT PAUL BRANDON/MARTIN ERIC LEE/PESSIS ANDRE/SHEEHAN WILLIAM/TORPEY PAT
3. Green Tinted Sixties Mind (3:30) 作詞:GILBERT PAUL BRANDON 作曲:GILBERT PAUL BRANDON
4. CDFF-Lucky This Time (4:54) 作詞:PARIS JEFF 作曲:PARIS JEFF
5. Voodoo Kiss (4:47) 作詞:MARTIN ERIC LEE/PESSIS ANDRE/TORPEY PAT 作曲:MARTIN ERIC LEE/PESSIS ANDRE/TORPEY PAT
6. Never Say Never (3:49) 作詞:MARTIN ERIC LEE/VALLANCE JIM 作曲:MARTIN ERIC LEE/VALLANCE JIM
7. Just Take My Heart (4:06) 作詞:CALL ALEXANDER HUGHES/MARTIN ERIC LEE/PESSIS ANDRE 作曲:CALL ALEXANDER HUGHES/MARTIN ERIC LEE/PESSIS ANDRE
8. My Kinda Woman (4:52) 作詞:GILBERT PAUL BRANDON/MARTIN ERIC LEE/SHEEHAN WILLIAM 作曲:GILBERT PAUL BRANDON/MARTIN ERIC LEE/SHEEHAN WILLIAM
9. A Little Too Loose (5:41) 作詞:GILBERT PAUL BRANDON/SHEEHAN BILLY 作曲:GILBERT PAUL BRANDON/SHEEHAN BILLY
10.Road To Ruin (3:59) 作詞:GILBERT PAUL BRANDON/LEIB GEOFFREY BRILLHART/PARIS JEFF/SHEEHAN WILLIAM/TORPEY PAT 作曲:GILBERT PAUL BRANDON/LEIB GEOFFREY BRILLHART/PARIS JEFF/SHEEHAN WILLIAM/TORPEY PAT
11.To Be With You (3:30) 作詞:GRAHAME DAVID RICHARD/MARTIN ERIC LEE 作曲:GRAHAME DAVID RICHARD/MARTIN ERIC LEE
12.LOVE MAKES YOU STRONG (3:30) 作詞:GILBERT PAUL BRANDON 作曲:PAUL GILBERT


① 前作ではビリーとポールのタッピング合戦から幕開けという衝撃的なオープニングでしたが、本作の幕開けも「ドリル」を使ったアップテンポなナンバー。ドリルのモーター音をピックアップで拾い、「ウイィィィ~ン」という音にするのは、後にエディもやりました。一般のドリルだとモーターがピタッととまるので「ウイィィ~・イ!」と終わってしまいますが、日本のMakitaのドリルだとゆっくりモーターが止まるので「ウイィィ~・・・ン」とだんだん音が下がっていくようにできるのです。
後にマキタ側もバンドに敬意を表したりバンドもマキタのために曲を作るなど、とてもいい関係をつくったきっかけでもあります。
この曲のすごいのは通常のギターソロのあとにギターとベースをドリルを使って弾くという冗談みたいなことをやっていること。ドリルの先にピックを3枚くっつけて、そのピックでハミングバードピッキングをやるだけなんですが。
さらに、この曲のギターソロでは、ポールの「タッカンフリーク」ぶりが表れています。もともと高崎晃ファンであったポールですが、タッカンの「Like Hell」などで聞ける急降下フレーズを披露。

② ライブなどでもすっかりおなじみの曲。タイトルや歌詞がいかにもライブ向け。ブルージーではあるものの、はねるリズムとキャッチーな歌によってノリのよく明るく渋い曲になってます。
ギターソロ前にギターとベースのユニゾンフレーズがあり、彼らならではのプレイにはなっていますが、あくまでそういうプレイは小出し。

③ 本作でのいくつかあるポイントの1つはポール・ギルバートのソングライティング力が飛躍的にアップしたことでしょう。もともとJUDAS PRIESTのようなメタルと同じくらいポップに感化されていたポールでしたがRACER Xなどで聞ける曲というのは、なんというか悪くはないもののキャッチーさはあまりなく、もう1つの出来でした。それが本作で本格的にそのポップセンスを開花させます。
その代表例がこの曲。歌メロのすばらしさはいうまでもなく、あの超有名なイントロのフレーズ。速いフレーズではないのにタッピングを使ってますが、スライドを多用して正直弾きにくい。でもあえてそうすることで独特のあの感じが出ています。
ギターソロは完全に曲本位のもの。そのギターソロのあとのコーラスは、ライブなら楽器演奏をやめてアカペラになる、というのはすっかりおなじみ。

④ ジェフ・パリスの曲。CDFFというのはCDの早回しのことですが、ジェフのバージョンにはそれはありません。ジェフの曲はいい曲が多いですが、この曲はまた格別だと思います。
スケールの大きいさわやかなAメロと、この曲でいちばんおいしい部分のBメロ、ほどよくしか盛り上げないでゆったり構えつつ、最後にハードに落とす、という絶妙なサビ。
ギターソロの前には、そのBメロの雰囲気をもたせたパートも登場。

⑤ このバンドのすぐれた部分はたくさんありますが、そのままでも優れた曲なのにリズムをちょっと工夫することでさらに印象深くしているパット・トーピーの力も大きいです。前作で言う「Merciless」のノリが出たのがこの曲です。エリック・マーティンとアンドレ・ペシスとパットの共作。
エリックらしいアメリカンな曲ですが、ヴードウー的かどうかはわかりませんが、細かくてアグレッシヴなリフになっていて印象的です。

⑥ エリックとジム・ヴァランスによる曲。ライブでもやることはあんまりなかった曲で、エリックのソロに近い感じがあります。明るく昇っていくサビはライブ向きではありますが。
前作ではビリーとポールのバックでエリックが歌っているようなところもありましたが、本作では前面に出ているエリックの存在。そのいい例がこの曲でしょう。

⑦ これもエリックと外部ライターによる曲。前作で「Anything For You」という名バラードを生み出したバンドですが、この曲もすばらしい!
ピアノをイメージしたというポールのバッキングプレイ。全編宝石のようにすてきな歌メロ(特にBメロがいい)。すっごいいいところでかすれてくれるエリックのヴォーカル。
ギターソロの盛り上げ方もすばらしい。そのあとの転調しての盛り上げ~締めもすばらしい。

⑧ この曲もライブではあんまりやらない曲で、ファンの人気もそれほどありませんが、情熱的なサビがとっても好きです。イントロの情感というかどことなく寂しげな雰囲気も、ほかの曲にはない感じです。

⑨ ポールとビリーの共作という、ありそうであんまりないパターン。
本作でいちばんブルージーな曲といってもいいでしょう。「オクラホマ・シティ」の部分はそのライブの場所によって変えるというのがライブでのお約束。
ビリーの低音ヴォーカルがとってもいいです。

⑩ たくさんのクレジットがありますがパットが中心になって作った曲のようです。だからかどうか分からないですが、シャッフルのノリがとっても心地よい曲。こういう曲では一層エリックの上手さが光ります。
RACER Xではスウィープピッキングがウリの1つだったポールですが、MR.BIGではスウィープを一切やらなくなりました。スウィープよりも1音1音がはっきり聞こえてスピードコントロールが自在なストリング・スキッピング(弦跳び)に切り替えたためですが、この曲ではスウィープを解禁。ソロの最後に10音以上にも渡るスーパースウィープを披露しています。あのビリーも「この曲にはゾクッとするギターソロがある」と感嘆。

⑪ 言わずと知れた全米No.1ヒット(映画の宣伝みたいですが)。
バラードが出るたび、この曲より好きだとかなんとか引き合いに出されるわけですが、なんだかんだ言って超名曲でしょう。たぶんこの曲をアコギで弾きながら歌った人って世界中に数え切れないほどいるはず。
エリックの歌もギターやベース、そして全員の温かいコーラスワーク。やはりこれは彼ら4人にしか生み出せなかった奇蹟なのだ・・・!

⑫ これはボートラです。ポール1人のペンによるアップテンポな曲。
ボートラにはもったいない出来の曲ですが、このアルバムでは入れる場所がないような気もします。
さらに⑪のあとですから「おまけ」というのは仕方ないかな。
リフから、後になってみればいかにもポールらしいものですが、この曲のハイライトはやはりビリーのおお暴れともいえるベースソロでしょうか。


*参考記事~
・JEFF PARIS 「LUCKY THIS TIME」(1994)→ http://blogs.yahoo.co.jp/fltsts/48209173.html