
ぜんぜんダメだったときか、世間的に評判が悪いのにあたしが気に入ったときのどちらかだ。
評判もよくて、あたしも気に入ったものは、どっちみち他の人たちが書いてくれるので。
さて、ここ数作はとっても出来がよかったのに、看板シンガーであるトニー・ハーネルが脱退してしまったTNT。正直、また解散かなって思いましたが、MASTERPLANのように後任をさっさと入れてニューアルバムを作ってしまいました。
「TELL NO TALES」に続き?頭文字TNTシリーズの「THE NEW TERRITORY」というタイトル。
「新しい領域」とは思い切ったタイトルをつけたものですが、これがなかなか評判悪し。
あたしもなかなか手が出せずにいました。
そして1曲目を聴き、「ダメだ!」と思いました・・・
しか~し、いやいや印象的な曲が並ぶ高品質のアルバムですよ、これは。
聞き込むほどに味が出る感じ。
注目はまずヴォーカルの交代だと思いますが、甘い声のハイトーンという点で、ハーネルもミルズも共通点があります。しかし、突き抜けるように尖ったハイトーンを持つハーネルほどは個性的ではないミルズ。でも、ベテランだし、劣っているわけではありません。
今回のアルバムの最も大きな注目ポイントは、ヴォーカルの交代などではなく、音楽的路線の変更でしょう。
TNTのアルバムでは多くの人が「INTUITION」の再来を求めてしまうと思うのですが、そこにあったポップで透明感のあるメロディが比較的シンプルなHR/HMに乗る、といったサウンドとは大きく異なってます。
VAGABONDに近いというと分かりやすいかも知れません。
シンプルな曲もありますが、基本的には「変な曲」ばかりです。
もちろんいい意味で。
01. A Constitution
02. Substitute
03. Are You Blind?
04. Golden Opportunity
05. Something Special
06. Now We're Talkin'
07. Wild Life
08. Fountain of Love
09. June
10. Can't Go On Without
11. 2 Seconds Away
12. Milestone River
13. Let's Party Mills
14. Don't Come Too Near
15. Harley Davidson (live)
① 彼らはアルバムの中の流れを作るのが実にヘタなバンドですが、ここでもそれは発揮されてます。
妙なグルーヴを持つ、やや気だるい曲。ファンならまず耳が傾くはずのミルズの声はダブルでとられている上にやや奥に引っ込んだ音作りになっているので、ミルズがどうなのかよく分かりません。
ギターソロも、得意の半音で妙にフレージングしたもの。
聞き込むと、そんなに退屈な曲ではないですが、最初のインパクトとしては問題あり。
② 彼らにしては珍しいアルペジオから、TNTらしい軽快なリフが登場。これを頭に持ってくればよかったのに。ここで初めてミルズのちゃんとした声が聞けます。てかギターソロがない!?
③ ダークではあるけど印象的なイントロリフが終わったら、単音リフに変わり、とっても印象的な歌へ。間奏からはイントロと同じメロディへ。
そのメロディに乗せてギターソロに進み、そのまま終わります。ソロは得意の半音外しを多用したもの。
④ 厚くて引っかかりのあるコードワークによるリフ。それに乗せて歌が始まり、キャッチーなサビへ。
そして「変な曲」の代表となる「な~な~な~なななななな~・・・」。このコーラスのこの変な声はなんだ!う~、変な曲!って思っているうちに耳にこびりついてくるのです。
⑤ TNTらしい、はねるリズムの厚いリフ。この曲の歌の出だし部分のミルズの声は個人的にあまり好きじゃないな~。サビもとってもキャッチー。イメージ的に(あくまでイメージだけ)5thアルバムかな~。
⑥ これまたTNTらしいリフに乗せて、まずは語り。そのあとの歌はかなりいいです。
ただ、サビでのファルセットはやや残念。そのサビでのベースがかっこいいです。
いずれにしてもかなりフックの強い印象的な曲。
⑦ あまりにもさわやかなイントロ。そしてTNT版「ラジオスターの悲劇」という感じのAメロ。
そしてキャッチーなBメロが相当いいです!
サビではR&Rになりますが、軽快でポップでここもいいですね~。この曲も印象的な曲!
⑧ もの悲しく心に響くイントロ~出だし。サビでちょっと明るくなると思ったらそこに入るリフで明るくさせない工夫。ギターソロはロニーにしてはふつうの展開。
この明るくもダークなサビの雰囲気が気に入れば、相当印象的な曲になります。
⑨ TNT版「ヘイ・ジュード」という感じの出だし。ヴァイオリンも入った、スタンダードナンバーのような温かいメロディを持つ曲。これまた印象的な曲だなぁ。
⑩ ハモリのギターが奏でるイントロ。深みはないけどポップな歌メロ。
だんだん崩れていくエンディングも含めて、これも印象的ですね。
⑪ ④にも通じるリフで、明るくポップなAメロから、ややダークな雰囲気をもつサビへ。
どうやって弾いてるんだろ?のギターソロ。途中何度か入るはねるリズムのギターフレーズの、最後の1音を半音ずらしてエンディング。
⑫ 政則さんが「ミルズ効果」というような新しい雰囲気のバラード。ぽわぽわしたイントロから「てぃ~りりりり~」という部分、歌メロまで、北欧フォークを彼らなりに味付けしたようなもの悲しく、ちょっと温かいメロディとサウンド。印象的な曲が多い本作ですが、この曲も間違いなく、その1つ。
⑬ 最後はほのぼのとした遊園地みたいな音に乗せてアルバムクレジットが読まれるという、よく分からないエンディング。まぁ、エンドロールだと思えばいいか。
それにしても、すごい訛りの英語です。
⑭ これと次の曲はボートラ。でも、この曲はなかなかいいです。
クリーントーンのギターとリズム隊が奏でるサウンドに歌が乗るバラードですが、⑫とはちがう傾向の、大きなスケールを感じさせるバラード。
ギターソロは、1stソロが曲を盛り立てるエモーショナルなもの。3:54からの2ndソロは、ここまで温存していたテクニカルさを満載にしたもの。トレードマークのマシンガンピッキングがこれでもかと登場。
⑮ ボートラのもう1曲は1stアルバムの「ハーレー・ダビッドソン」。ライブとのことですが、歓声も入ってないし、スタジオライブかな??
「INTUITION」と違う、というのはしょうがないさ。
今のメンバーショットを見たら、ロニーがいることでしかTNTと判別できない感じなんだから(笑)。
TNTの記事**
TNT 「TNT」(1982)→ http://blogs.yahoo.co.jp/fltsts/49292594.html
TNT 「KNIGHTS OF THE NEW THUNDER」(1984)→ http://blogs.yahoo.co.jp/fltsts/49294866.html
TNT 「INTUITION」(1989)→ http://blogs.yahoo.co.jp/fltsts/34001412.html
TNT 「REALIZED FANTASIES」(1992)→ http://blogs.yahoo.co.jp/fltsts/37930948.html
TNT 「FIREFLY」 (1997)→ http://blogs.yahoo.co.jp/fltsts/42951150.html
【インタビュー再録】ロニー・ル・テクロ(2007.8)→ http://blogs.yahoo.co.jp/fltsts/51212681.html