40点。

 

当映画は国内外問わず評価が低め。特に海外では、前作の高評価に対しての低評価が顕著です。

 

 

〜あらすじ〜

テロによって首都が壊滅した近未来の日本。テロの首領・七原を抹殺するため、国家は新法BRIIを制定し、中学生の1クラスの生徒を徴兵。七原を殺せば生きて帰れるという苛酷なルールのもと、生徒たちは戦いに身を投じる。

(※ムービーウォーカープレスより抜粋)

 

 

以下、ネタバレ。って言うか、感想。

 

 

□ 「十分稼いだので、もう新作を書くつもりはない」の一文について。

 

 

「バトル・ロワイアル」原作者の高見広春の言葉と言われますが、真偽は不明です。実際のところ、世間でこんなの広がったら書けなくなると思いません?彼が

「バトル・ロワイアル」以降の作品を発表していないことで、余計に信憑性を増していますが…。続編の当映画はオリジナル脚本で、これを基に高見広春が小説化したという逆パターンです。

 

 

□晩年の深作欣二監督の思考とその両立につき。

「私も戦中派のしっぽにぶら下がっているが、今の人間の有り様には、エネルギーのようなものが感じられない。平和は結構なことだが、その中で人間が衰弱してしまっているのではないか。」仰ることは頷けるものですが…。

 

 

「暴力を描くことで、暴力を否定したい」根本とは相反するもの。もし監督がご存命であれば、このテーマの折り合いをつけるための解決策が見出されたかも知れませんが、彼が手掛けられたのは、少女の回想の1シーンだけです。とても、残念です。

 

 

□ この世界の縮図としての「バトル・ロワイアル」

前作で描いたテーマを拡大し、国際的な問題や若者たちへのメッセージを前面に押し出そうとしているのですが、これが成功しているとは言い難く。前述の深作欣二監督のテーマとしての骨子が欠けてしまったことが最大の要因かと。

 

 

当映画は戦争や暴力の否定というテーマが背景にある一方、生きることは戦うことであるといったメッセージが相反しています。深作欣二監督は、戦争や暴力を描くことで平和の大切さを訴えようとする試みが根底にあったので、その両立を狙ったものであるから、その意図が汲めなければただの矛盾になります。それが映画全体の方向性を曖昧にしたと言えます。

 

 

□キャラクターの描写と戦争描写の相性の悪さ。

戦争ではキャラクターの死が記号的に描かれるのは避けられないことですが、当映画は個々のキャラクターが持つ、内面的な葛藤や成長の描写が不足していて、物語全体が平板化しています。

 

 

前作は多様な人間性が物語を深めていましたが、今回はそれが欠如しており、単なる駒と化しているようです。取って付けたように

「真剣に生きることは死ぬことの何百倍も難しい」とか、格好良い台詞が度々あるんですが、言葉で説明するなら映画じゃなくて良いんですよ。そもそも、戦場においてはゆっくりと遺言を聞く暇があるとは思えません。何故、手に余る脚本を書いたの?

 

 

□竹内力演じるキャラクターと大人って。

とは言え、本作においても興味深いキャラクター描写が存在します。敵である大人側として登場する竹内力は、子どもたちと同様に首輪を着けられ、行動を強制される立場でした。彼が政府に啖呵を切る場面は、大人もかつては子どもであり、純粋さや正しいことをしたいという思いを持ち続けているというメッセージの象徴です。

 

 

大人にも、劇中の子どもたちと同じような葛藤や正義感があるんです。だけど、この人だけ。この要素は映画の中で数少ない共感を呼ぶシーンであり、作品全体の中でも際立つ存在です。素敵♡

 

 

〜総評〜

当映画は、前作のテーマを拡大しようとしましたが、全体として失敗に終わった印象です。戦争やテロといった重厚なテーマを描く中で、メッセージに一貫性が無いので、視聴者を混乱させます。深作欣二監督の意図が十分に反映されず、作品の方向性がぼやけているのが致命的でした。唯一、竹内力が印象に残るものの、全体の出来を救うには至りません。結果として、前作と比べ大きく劣る作品となっています。

 

 

引き継ぐものは昇華しないといけないけど、父が偉大で辛いかも。

 
サムネイル