邦題:ミスター・ノーバディ

72点。

 

最初にお伝えしておきます。当記事は2000文字超え、文章のみです。ネタバレは避けています。

 

 

~あらすじ~

西暦2092年。人間が不死を手に入れた世界で、最後に死を迎える118歳の老人ニモは、病院のベッドで自らの人生を振り返る。脳裏に蘇るのは、人生の分岐点となった数々の出来事。選択した、しなかった人生、様々な可能性がニモの脳裏を駆け巡り…

(※Filmarks映画より抜粋)

 

 

以下、感想。って言うか、私の場合。

 

 

□未怜さんの小噺からスタート!(今回はつまんないだろうけど)

これは、哲学的な概念のお話です。

私は今までの人生において、あらゆる選択をしてきましたが

1.それらの選択は大した意味を持たないという考えと、

2.それら全ての選択肢を一度経験し、その中から自分にとって、最適なものを選択しつつ、他の経験は忘却しているだけ

という二重思考を持っています。

 

まずは、脳科学の観点から、人間の脳の容量は有限であり、無限通りの経験をすべて保持することは不可能です。したがって、私たちが実際に記憶として保持できるのは一つの人生の経験に限られると考えます。例えば、夢はしばしば、無意識の思考や、未解決の問題を反映するものであり、非現実的な選択肢や、不確定な未来のシナリオを扱うことが多いです。脳はこれらの情報を現実と区別し、不要な経験と判断された場合において、記憶を消去する傾向にあります。これは、脳の記憶容量の限界によるもの。選択した経験のみを記憶に残すというモデルは、脳のリソース管理として理にかなうものですよね。

 

次に、多世界解釈です。量子力学の一部として、すべての可能な選択が異なる世界で実現されているといった解釈になりますが、これにより、一つの選択が特定の意味を持たないという考えと、最適な選択をするという考えの両立は説明できます。

私たちが一つの現実を生きている一方で、他の可能性も並行して存在するという視点です。

と言うよりも、私としては、個々の選択が大きな意味を持たないと感じつつも(これは、一種のニヒリズム)その選択をするプロセス自体が重要であると認識しているというのが正しいです。

 

また、認知科学の視点から見ると、人間の思考は過去の様々な経験に基づいて最適な結果を予測し、最悪の結果を避けるための方法を弾き出します。このプロセスには、認知バイアスや意思決定理論が関与しており、私たちは無意識のうちに過去の経験や感情に基づいて意思決定を行っています。このようにして、私たちは現実の中で最適な選択を行っているのです。

 

そしてこれには、時間の概念が直接的に関与しません。時間とは、私たちが選択した経験を順番に並べるためのツールであり、これによって私たちは過去、現在、未来という枠組みの中で生きることができます。時間の概念がなければ、私たちは無限の時を過ごすことになり、人間としての存在を維持することができないでしょう。時間は私たちの存在を定義し、選択を意味あるものにするための知恵として機能します。

 

この考え方は、人間の脳の生物学的限界、心理学的な選択のプロセス、そして哲学的な時間の捉え方を組み合わせたものであり、各要素を相互に矛盾なく連携させたものです。このような視点から、人生の選択とその意味について深く考えていくと面白いんじゃない?知らんけど。

 

 

□当映画は上記の私の考え方から、時間の哲学を奪い、捻ったもの。

あらすじの通り、人間は化学の力で不死を手に入れました。本来なら、不死となった人間が思考の中で、時間を自由に飛び回る描写が正しいようですが、時間からの解放とは、最早、人生においての選択の重要性、ひいてはその意味を持ちません。これを永久再生化を施していない唯一の死ぬことの出来る、私たちが知る人間ニモを使って描写することで、それが何を意味することかを私たちに問い掛ける内容であると解釈したものです。

 

 

□そんな考察は要らなくて、視覚と聴覚で楽しむのが本当は正しいんじゃない?

鏡の中にカメラが入り込んだり、ところどころ逆再生したり、2092年なのにアナログの催眠術であったり、バタフライエフェクトを映像で表現するのも興味深い。それをバディ・ホリーのエヴリデイに乗せて。模型の世界だったり、赤ちゃんの数え歌。

 

ザ・コーデッツのミスター・サンドマンに至っては、エンドロールにまで使われる。それも、時代を表現する為に、エミルー・ハリス→GOBと言った具合にカバーを流すのも良い。それと、衝突事故の時も口笛のサンドマンだったね。もう一つ、印象的に使われていたのは、オーティス・レディングの For Your Precious Love かな。

ユーリズミックスもちょっと流れてたね。全体的にはオールディーズの音楽が映画とマッチしてて、耳に心地良かった。

 

 

□最後にひとつだけ、文句を言わせて欲しい。

3人の女性との恋愛、結婚生活が描かれるけど。これって、正に男性の思考って感じ。大事な人は一人だけでしょ。他の女性とのこと考えられたら、そりゃ気付く。ジーンがとても不憫だった。だって、間に合わせ扱いなんだもん。

 

 

ニモがモテるのは妄想だって、思い込みたい私が居たのだった。

 
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