邦題:ザリガニの鳴くところ
62点。
粗雑で無く、繊細。どこか夢見心地。…やはり、女性監督のお仕事で、嬉しく思うのと同時に、ある種の過剰な演出の不自然さとして、私の脳にフィルターをかけた。
以下、ネタバレせずに、感想。
それだけのことで、結末が読めてしまったことが残念だった。私は綺麗に飾り立てるよりも、例え、汚くても、人間のありのままを見たいから。
加えて、最初から、それこそ最後まで、湿地の娘が差別される理由というのが私には解らなかった。演出の妙なんかでは無く、劇中での説明が欲しいんだ。日本で育った私には、ノースカロライナ州が伝統的に保守的な土地柄であることは伝わり難いし、アメリカの当時の世相にも疎いから。ある意味で幸せな頭と言える。
結論を述べると、これは敢えて、過剰にインスタ映えを狙って、原作の世界観を映画という時間が限られた媒体に、理路整然と収めた優等生のような映画だった。優等生が面白いとは限らないけど。
□〝ザリガニの鳴くところ〟と〝冒険〟が対義語になってるとこ。
ザリガニは鳴かないんだけど、体を斜めにして、呼吸をする時に小さな音が聞こえるのだそう。それが聞こえるくらいに湿地の中でも内の方ということ。湿地内で育った彼女にとっては、その自然の恵みや厳しさを〝友〟と表現していて、なかなか深い。
対して、湿地の外側の世界に当たるのが〝冒険〟彼女が外に出るのは、生きるためでしかない。そこは決して、悪意だけの場所として描かれてはいないけど、彼女が外に目を向けるようになると意地悪く、辛い目に遭うのだ。
□湿地の娘、カイアの人生を最期まで。
その描写は深く、視聴者の共感を得るもの。この、辛い思いをした少女の一番の理解者は、私たちでなければならないと思える。
〜総評〜
この行動に納得出来ないという人は、被害を受けたことの無い、幸せな人なんだろうと思う。付随して、貝殻のネックレスは彼女の複雑な心情が現れてる。当映画は特段に難しいことは無く、感覚で観て、素直な気持ちで考えたら色んな意味でじわると思う。
原作の小説に手が伸びるメディアミックスが完成してる映画でした。
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