邦題:フォーン・ブース

75点。

 

息も付かせぬ緊張感の演出が特徴のサイコロジカルスリラー映画。

ワンシチュエーション物はカメラシーンが限定されるデメリットがありますが、電話ボックス内とその周囲の出来事を映像編集で同時に見せる等の工夫により観客を飽きさせない、映画ならではの表現が光ります。

ストーリーも単純明快、おじさん同士が仲良く電話でお喋り、電話相手が吹替版だとスネーク大塚明夫。最早これはASMRです!

 

 

以下、ネタバレ。って言うか、比較。

 

 

何故「ドント・ブリーズ」が純粋に楽しめなかったのか。

私の映画遍歴から似たコンセプトで若干のプロットの無理を含みつつ、楽しめた事を条件に比較対象として選んだのがこの映画、未レビューなので再鑑賞します。

 

劇場等で舞台鑑賞に慣れていると、ワンシチュエーション物には目新しさを感じないものです。この映画では今はもう絶滅寸前の狭っ苦しい電話ボックスの中。

究極は受話器を耳に当てた部分で聞こえる音の世界とも言えます。

 

人間とは不思議な物で、セガールが

「電話が鳴ったら取ってしまう。」(これは今の携帯電話が一般に普及している現代では伝わらないかもしれません。)と言うように、観客も映画であるのに、電話口の相手の声を聞く→聴くに感覚を変えさせられます。これが脚本の妙で物語に集中させる効果となる訳ですね。

観客がドント・ブリーズで息を潜めてしまう感覚や

クワイエット・プレイス」で静かにしてしまう感覚に近からず遠からずですね。

 

但し、人間の集中力は長くは続かないもの、そもそもの映画自体の尺をバッサリ81分で纏めています。映画開始から10分以内に電話ボックスに辿り着くのもグッド。それも、無駄に冗長を感じさせないような工夫を感じます。

ドント・ブリーズは長ーく感じましたが、88分なのですね。そんな変わらないんだ。

 

主人公スチュは誤解を恐れずに言えばチンピラですが、殺されて良いレベルの悪人では無いです。何より、追い込まれて言わされたものの、自分の弱さを認めて罪を告白し、反省し謝罪、究極の自己犠牲、深い愛を感じる許しの過程を経るので人々の共感を得やすいです。観客が許せると言うか。

ドント・ブリーズは尽く逆を走りますから、段々、許せなくなりイライラしてしまいます。

 

じっくり考えなくともスチュとピザ屋さんの対比は理不尽ですし、周りもとばっちりなんですが、ラストが反則とも言える力技で全部ぶっ飛びます。(但し、これがクリティカルヒットかスカかは人に依ります。)

そう言えば、スチュ、自称やり手のメディアコンサルタントだったね。神だわ。

認めざるを得ない。

と同時にこれは映画だよ!エンタテイメントだよ!って全力でアピールして来るのを感じ、スッキリしてしまうのです。

ドント・ブリーズはもやもやを残すエンドで、続編を匂わせる上手い手なんでしょうが、如何せん気持ち悪くて、あの世界が続いて欲しく無いと言うか。

 

上手く書けませんが、この映画の魅力が伝わると良いな。