邦題:シャイニング
59点。
 
ホテルに監視されているようなカメラワーク、アート作品の様なカットシーン。
耳を澄ませば微かに聴こえる、不気味な声等の表現力。
40年以上前に作られたと思えない程の完成度を誇るモダンホラー映画。
俳優陣の怪演も手伝って、伝説のホラー作品の一つと位置付けられています。
怖い?怖くない?人によるのかな。
 
 
以下、ネタバレ。って言うか、今回は長め!
 
 
実は、二人しか死んでいません!
 
最初は食事のシーン。まだ子供のダニーが口の中に物が入ったまま喋っています。
注意してあげて欲しいけど、そもそも母親のウェンディが膝を立てて本を読みながら食べています。
時代も文化圏も違うから仕方無いんですけど、気になりました。
 
次は面接?打ち合わせ?のシーン。父親のジャックは雇われる身でありながら、足を組んで自信満々、横柄に喋っています。いや、解っています。
それが向こうでは現在でも正しいアピールの行動である事を。
ただ、私が、これは絶対に仕事が出来るタイプじゃないって思うのもまた、自由ですよね?
 
家族でホテルへ向かう車内。過去にドナー隊が遭難時、人肉を食べたと言う悪趣味な会話をしています。
ウェンディが話を止めようとするけど、そもそも振ったのは貴方です。しかも、この件は当映画のどこにも掛かっていないと考えられます。考察班どこ行った。
ダニー、危ないからちゃんと座ってなさい!
 
ダニーとハロラン料理長の会話シーン。子供にも敬意を払って喋る、この映画の良心です。
「237号室には近寄ってはいけない、入ってはいけない。」
と注意してくれるんですが、もちろん、ダニーは守りません。 
 
さて、家族以外は誰も居なくなったホテル。ダニーが三輪車で館内を爆走しています。なぜ、誰も止めないのか。
ジャックは11時半にのんびり起床。そして、ベッドの上で朝食を取る。怠惰の極みですね。
実は、彼が管理の仕事をしている描写は一切ありません。そりゃ、無職にもなるわ。
その後、一人で職場の壁を相手にキャッチボール。
一通り遊び終わったら趣味の小説(食えない小説は趣味でしかない)を書き始め、気を使って話しかけたつもりのウェンディに逆切れします。
やさぐれウェンディは館内で歩き煙草をしながら、旦那の上司の机に足を載せて無線をする訳です。あかんね。
 
ようやく、管理っぽい事をしている描写がありますが、やっているのはウェンディ。
こうやって生活して来たんだろうなと思うとちょっと不憫になりました。
その時、ジャックは居眠り中。怖い夢を見ているようです。子供か。
 
ダニーの首に痛々しい痣が。ジャックがウェンディに疑われますが、ここには家族3人しか居ないので普通の流れです。その一寸前にも夢の中で二人を切り刻んだと言っていますし。
その後、癇癪を起こして、酒を呷って前科がある事を自供しています。つまり、自分で種を蒔いたんですね。
 
ダニー、ここでシャイニングを発動、休暇中のハロラン料理長を召喚します。
どうでも良いけど、部屋が悪趣味です。
原作だと、もっと活躍するようですが。
 
ジャック、幻、或いは幽霊相手に、さくっと浮気します。駄目だこいつ。
 
さて、ようやく誤解が解け、家族の安全の為にホテルから逃げようとジャックに訴えるウェンディ。
ジャックはこの仕事こそと思って打ち込んで来たらしい。思考がやばいですね。
道路の雪掻き、洗車屋、上等じゃない。そんな考え方だから無職になるんでしょ。
本当、碌に仕事もしていないのに良く言うわ。
 
ジャック、再度癇癪を起こし、整頓済のカップや皿を薙ぎ払って、飲酒です。
そして、躾と称してウェンディとダニーを斧を持って追い回す事になります。
無線も車も壊しちゃってまぁ。
 
余談ですが、タイプライターで書かれた文章は
"All work and no play makes Jack a dull boy"
仕事ばかりで遊ばないジャックはつまらない男になると訳せます。
つまり、勉強や仕事は、適度な休息や娯楽が与えられる事によって、能率が上がると言う諺であり、日本語で一番近いニュアンスは
「良く学び、良く遊べ。」だと思われます。いや、一切仕事してませんよね。
「仕事ばかりで遊ばないジャックは今に気が狂う」とか意図的な誤訳ですね。
 
これって、ウェンディがここまで恐怖するのは過去にDVやってるんじゃないの。
無職、酒癖、DV、幼児虐待って役満でしょ。
 
「ちょっとでも俺の責任を考えた事があるか。雇い主に対する俺の責任を考えた事があるか。5月までここの管理を引き受けたことを忘れたか。」
もう、ここまで来ると支離滅裂です。
 
そして施設を破壊しながら、ウェンディを恐怖のどん底に落とし、この映画の良心を一撃で惨殺。
ウェンディはホラー好きらしいから、実は喜んでいるのかもしれません。やばいね。
 
さて、ここでクイズです。
ジャックはどこから狂ったのでしょう?
鏡がトリガーである事は解りますが、私から言わせれば、この家族は最初から狂っています。
 
スティーヴン・キングが否定する一つがコレなんですよ。これではホテルの邪悪な何かがジャックを狂わせたか、もともと狂人なのか曖昧なんです。
そして、ダニーの特殊能力シャイニングも犠牲者を増やしただけでしかありません。
この設定を活かせていないのは原作者としては辛いでしょう。
 
何かちゃっちい被り物をした人と紳士はベッドで何をしていたのですか?考察班仕事して
凍死したジャックのアップ要ります?間抜けな漫画みたいなんですけど。
 
現代、ホラーは格段にレベルを上げて来ました。
その礎となったこの伝説のホラーも既に、役目を終えたと思います。