邦題:シャッター アイランド
86点。

巷では超難解映画と呼ばれる、サイコロジカルスリラー。
ネオノワールの特徴を丁寧に踏襲しており、俳優人も豪華絢爛。

レオ様素敵、格好良い!
残酷描写は所々ありますが、現実感が無い様に誘導する演出で、あまり気にならないかも。
この映画が扱うテーマは、精神医学界における保守と革新派の戦争であります。

これは断じて異論を認めませんっ。

 

 

~あらすじ~

精神を病んだ犯罪者だけを収容し、四方八方を海に囲まれた

「閉ざされた島(シャッター アイランド)」から一人の女が姿を消した。

島全体に漂う不穏な空気、何かを隠した怪し気な職員たち、解けば解くほど深まる謎……。事件の捜査に訪れた連邦保安官テディがたどり着く驚愕の事実とは!?

(※Filmarks映画より抜粋)


以下、ネタバレ。って言うか、種明かし編。


□時代と舞台の背景。

物語の骨子が嘘だとそもそも成立しません。冒頭で述べる1954年のボストン湾諸島にある、シャッターアイランドが舞台である事を確定します。


□いきなり核心に触れます。

テディが処方されるお薬はクロルプロマジンです。この頃のアメリカの新薬で、適応は統合失調症における幻覚や妄想の抑制。重篤な副作用としてはパーキンソン症候群で、初期症状は手が震えます。

 

 

□精神医学界における保守と革新派の戦争って?
院長、シーアン医師は薬物療法と心理社会的療法を推進する革新派です。

精神を患った為に犯罪を犯した者を犯罪者と呼ぶ事を許さず、患者として向き合っている事に強い意志を感じますね。

対して、警備隊長は暴力を語り、ナーリング医師は心の傷が怪物を生み出し、それを止めるべきと説く。つまり、ロボトミー手術肯定の保守派とみなせます。
1949年に統合失調症の治療法として主流であったロボトミー手術の生みの親のモニス氏がノーベル生理学、医学賞を受賞しており、この頃ではれっきとした医療だったのですが、1950年、倫理面からソ連にて法律で禁止されたのを皮切りに、ヨーロッパの国々も追随していきました。


結局、1967年を最後としてアメリカは上記手術を行っていませんが、現在も術式そのものは禁止されていません。余談ですが、日本でも保険適応の手術だったりします。


□考察が楽しい難解映画。
さて、院長がご丁寧に白板でアナグラムの説明をしてくれますが、本映画のタイトルをアナグラムすると
「Truths and Lies」 和訳すると「真実と嘘」となります。
原作が小説であり、主に信頼出来ない語り手の存在が私達を惑わすのですが、それは一つの楽しみ方であり、個々の考察に関して否定するものではありません。

 

~総評~

テディは自身を取り巻く全てを理解したのか。
その上で、治療が患者本人にとっては最善では無い事を示したのか。
革新派の治療法には一縷の希望となったのか。
シーアンは医師として、相棒としてテディを止める事が出来なかったのか。

原作に無かった最後のセリフを加える事で、観客に強烈なメッセージを残す、秀逸な終わり方だと思います。

 

 

現代精神医学は正しい治療が出来ているかを深く考えさせられます。

 
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