プロジェクト・ヘイル・メアリー
監督:フィル・ロード&クリス・ミラー
感想 冒頭、フィルムに焼き付いたようなジグザグのライン。ほどなく、これがジッパーだってことに気づく。この時点で、これはちゃんと見なきゃいけない映画だなって感じがする。ただ何気ないものを写していても、映像としての純粋な魅力がある。
物語の構造的には『
インターステラー』を連想させるし、映像もそれを彷彿とさせるところがある。底流に流れる悲しさ。ただ、『
オデッセイ』の作者だけあって、主人公は脳天気で楽観的だ。肩肘が張っていない。
展開そのものも、わりとあっけらかんとしている。たとえば『2001』『未知との遭遇』『コンタクト』『メッセージ』『三体』あたりの神秘的な装いはあまり感じない(それが良いか悪いかは別として)。
映画として完璧かと言えば、決してそうではなくて。回想シーンと現在を行き来する作りは、少しリズムが悪いように感じた。全体がひとつの目的に向かってグッとドライブしていくわけでもなくて、むしろいくつかの山を越えて行く感じ。ひとつ山を登っても「あ、次もあるの?」みたいな。
その辺は、全体がコーディネートされた『インターステラー』の映画的な美しさとは違う。映画的と言うよりは、むしろTVドラマ的だ(2周目以降は分かった上で見るからもう少しスムーズに感じるかも)。
宇宙船の機動とかも少し嘘っぽい。あえてリアリティ・ラインを下げているように感じるところもあって、それが映画的に正しいかどうかは置いておいて、少なくとも僕の好みとは違っていた。
科学的な考察もすごく厳密という感じはしない、SF的な仕掛けとして「こういう設定なんだね」と納得はできるけれど、物語的な都合も少し感じたかな。ただ、途中でルールが変わるみたいな恣意性は感じない。
…というところはあるのだけれど。
そういうのすべて置いておいても、これは見るに値する映画。浸るに値する映画。ここまで名前を並べてきた数々の名作SF映画(とりわけファースト・コンタクトもの)の系譜に連なる作品。(『E.T.』ふくめて、そうした映画への明確な
オマージュもいくつかあった)
なにかを感じさせる。宇宙のなかで、生きていること、繋がること。心に残る数々の映像。圧倒的なライアン・ゴズリングの演技。
完璧ではないが素晴らしい。
☆☆☆☆☆(5.0)
映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』US版予告 2026年3月20日(金・祝) 全国の映画館で公開